ここは茨城県T市の大学寮H宿舎。
最近この宿舎の学生達はあるものに迷惑していた。
それは幽霊である。
その幽霊はマラソンランナーのような姿をしており、壁をすり抜けて宿舎の端から端の部屋までを走るのだという。

ランニング幽霊と名づけられたその幽霊は、寝ている学生達を踏んで夜の宿舎を走るために、踏みつけられたりビックリする学生が続出していた。

「そういえばこの大学の陸上部の部員でマラソンのゴール直前で死んでしまった奴がいて、その幽霊が出るんだってさ。きっとあれなんだろう」

そんな話を聞いたひとりの学生が「俺に考えがある」と言って次の日の夜、自分の部屋に寮のみんなを集めた。

彼はテープを用意すると部屋にいた一人に端を持ってくれと頼んだ。
そして、深夜ランニング幽霊が現れた。
幽霊はいつものように壁をすり抜けて現れたが、学生の持っているテープを切ると満足した表情をして消えてしまった。

なぜ消えたのか訳を聞かれた学生は「なあに、幽霊はゴール直前で死んでしまったんだろ?だからテープを切らせてやったんだ。さっき作ったのは幽霊の待ち焦がれたゴールテープだったんだよ」

そう言って学生はにっこり笑った。