うちの実家のある市の火葬場の話。

今は立て替えられて新しくなっているのだが、古い建物の時は煙突の高さが足りず、十分に高い場所まで排煙できなかった。
また焼却炉も古く性能が十分ではなかったため、近隣の畑や民家から焼いた際の煙が臭うと批判や気味悪がられていた。
そのため、立て替える計画が立ち上がった際には付近の住民も反対などしなかったのだが。

きちんとお祓いをした後、取り壊しを開始しようと、建設会社の社員がショベルカーに乗り込んだ。
だがおかしいことにあちらこちらとショベルカーを動かすが、いつまで経っても建物を壊そうとしない。
周囲の人間が不思議に思っていると、真っ青な顔をしてショベルカーから降りてきた。

聞けば「いざ建物に手を入れようとすると、その場所に白い服を着た女が出てきて邪魔をする」というのだ。

周りの人間にはそんな女は見えていなかったが、場所柄笑い話にもならず一同押し黙ってしまった。
だが工事を止めるわけにもいかず、最初の作業員より若い男が「俺がやる」と言いショベルカーに乗り込んだ。

しかし先ほどと同じようにあちらこちらと迷った挙句、覚悟を決めて建物にショベルカーの爪を立てた。
そしてそのまま降りてきて作業を止めて現場から帰ってしまった。
残された人々が恐る恐る作業を再開したが、その後、白い女が目撃されることはなかった。

やがて大きな事件もなく建替え工事は完了した。
しかし最初に建物に爪を立てた若い作業員は精神を病んでしまい、医者にかかっているそうだ。

建設会社勤務の母親から聞いた話。
ちなみに母親の会社の作業員ではない。