場所は詳しく聞いていないけど私の地元のお話。
県名は内緒ですが、私は先輩の話を聞くまでその場所を聞いたことなかったので有名でないところなのかな。
実話らしいです。

当時、先輩は音大に通う1年生でした。
大学のサークルで例年、肝試しをしていたそうです。
1年生と2、3年生1人ずつの2人1組でトンネルの中を歩いて抜けるというものでした。
トンネルの長さは長くもなく短くもなくといった感じです。

ただし、そこのトンネルはもう使われていないので内部には一切照明がありません。
これがこの肝試しの特徴だったそうです。
懐中電灯は持たずに歩くのです。

先輩は恐怖というよりも興味でいっぱいだったそうです。
人数も結構いたのでみな落ち着いていました。
やがて一組、また一組とトンネルの中へ消えていくごとに少しずつ緊張感が高まっていきます。
やがて先輩たちの番がきました。
先輩が右手にたってゆっくりと入っていったそうです。

入り口では全然平気だったけれどトンネルの中は本当に真っ暗で・・・。
怖いというよりはむしろ気をつけて歩かなければいけないと思っていたそうです。

足元も見えません。
と、その時隣にいた相方が声をあげました。
反射的にその人がいると思うほうを向くとやはりなにも見えません。
相方は笑いながら壁にぶつかったのだと言いました。
人間はまっすぐ歩いているようでも視覚が麻痺すると利き足の逆にずれていくのだと。
その相方はぼそぼそといっていたそうです。

すると、それから二人はできるだけ真っ直ぐ歩くように気をつけました。
正面からオレンジのパーカーを着たおじさんが二人の若干横を通り過ぎていきました。
やがてトンネルの出口が薄い暗闇であらわれたそうです。

出口には先に通過した人たちが待機していました。
みんな何事もなかったようですが後続の結果にいくらか期待していたようで、どうだったかと聞いてきました。
別に何もなかったよと、トンネルを振り向きながら答えた先輩と相方は凍りつきました。

先輩たちが歩いてきたトンネルは真っ暗だったのです。
オレンジのパーカーも顔だって見えるはずがなかったのです。
けれど二人とも全く同じものを見てしまいました。
パーカーのおじさんは通りすがる時、相方の左手つまり壁があるはずのところを歩いていったということです。