五年一組の子供達が百物語を行いました。

場所は小学校の一階にある彼らの教室。
人数は二十人。
暗くなった部屋の中に全員集まり、百本の蝋燭に火を灯します。
それから、「何か変なことが起きた時のために」と、用意したテープレコーダーを作動させて、百物語は始まりました。

それから、子供達は次々と、自分の知っている怖い話を語っていきました。
学校の七不思議。
都市伝説。
幽霊の話。
妖怪の話。
今まで聞いたこともないような話。

一話語られる毎に、蝋燭の火が一つ消されていく。
会が終わりに近づくにつれ、だんだん部屋の中が怪しさを纏う雰囲気になっていきました。
廊下側と外側の窓は黒く、鏡のように室内を映しています。
物蔭は濃くなり、何かが潜んでいる気がしてきます。
壁には子供達の影法師。
今にも踊り出しそうです。

子供達の中には不安と緊張が増していきました。
あと少しで百話。
昔から、語ってはいけないと言われる百話目です。

やがて、九十九話が終わり、蝋燭の数はあと一本。
全員がしばし躊躇しましたが、すぐに誰かが話し始め、五分も経たない内に終いまで語ってしまいました。

「・・・これで、私の話は終わり」

フッ、と最後の灯りが消え、部屋は闇に包まれました。

それからしばらく、全員静かに身構えました。
何か起きるのか・・・? と。

しかし、いくら待っても何も起こりません。
子供達は自然と安堵の溜め息を洩らしました。

「なぁんだ、なんにも起きないじゃん」

「そうだねー」

明るく言い合いながら教室の電気を点け、子供達は帰り支度を始めました。
その時、テープレコーダーの持ち主の女子生徒が、あっとあることを思い出しました。

あたしさっき、四話しか話してなかったっけ・・・二十人で百物語をやったので、一人五話語らなければいけない、というルールだったのです。
誰かが六つ話したのかな? それに・・・女子生徒は頭に新たな疑問符を浮かべながら、レコーダーを鞄にしまおうとしました。
もう一つ、気になることがあったのです。

さっきの百話目・・・ちゃんと聞いたと思ったのに・・・どんな話だったっけ・・・?

「・・・これは、実際にあったことよ」

突然、レコーダーから大音量で、百話を語った生徒の声がしました。
間違って再生のボタンを押してしまったみたいです。
一瞬身体が萎縮した女生徒は、すぐに停止のボタンを押しました。

・・・やばいっ・・・恥ずかしいと思った女生徒は、苦笑しながら、謝ろうと振り返りました。

「はは、ごめんみん・・・な・・・?」

全員、凍り付いたような表情をして立っていました。
顔色が真っ青で、身体を震わせています。

「・・・? どうしたの・・・?」

同級生達に声をかけると、一人が呟きました。

「・・・今の・・・誰の声・・・?」

「・・・え・・・?」

「私が死んだ夜の話なんだけどね・・・」

再生ボタンを押していないのに、レコーダーが再び喋り始めた。
その瞬間、突然教室の電気が消えたということらしいです。