私は10年ほど前、本州の中央に位置するとある県に住んでました。
そのころ私はとあるマンションに住んでおり、そのマンションのよこに、大きめの空き家がありました。
田舎なので土地は広く、草がおいしげり、噂話になるには格好の場所でした。

当時小学生だった私がそんなおもしろそうな場所に興味を示さないわけがなく、友人のS山と連れ立ち探検に行くことにしました。
昼間でもそこはなんだか薄暗く、背丈ほどもありそうな草が恐ろしくて仕方ありませんでした。

入ろうと正面のドアに行きましたがやはり鍵がかかっており入れず、裏に回りました。
そこには窓があり、曇ってはいましたが中の様子がうかがいしることができました。
中はどういうわけか家具がまばらにのこっており、棚や、ソファー、小さな机などがありました。
中をさぐっていると、裏からS山の呼ぶ声がしました。

そこにはガラス棚があり、中に工芸品などが入ってるのを見ることができました。
そのなかに「フランス人形」がありました。
私たちはこれを見た瞬間なんだかこわくなり、慌てて家に帰りました。
それから10年後。去年の8月です。
私はあの「探検」の後引っ越してしまい、S山と会うこともなくなりました。

しかし最近になって昔住んでた土地に戻る機会があり、S山と再会しました。
そしてよもやま話に花を咲かしたわけですがその際、「探検」の話になりました。
あのときは子供だったので恐怖に負けたが今なら大丈夫だろう。

正体を見極めよう、そんな話になりました。

夕方5時。
私達は懐中電灯をもち連れ立って空き家の前に行きました。
恐怖よりは懐かしさが先にたちます。残ってたことを感謝するほどでした。

そして昔とまったく同じコースをたどることにしました。
侵入し、表にまわる。
あのころは高く感じた雑草も今はそうでもありません。
二人で窓のほうにまわり、中を確認。かわったことはなにひとつありません。
そうしてフランス人形の置いてあった部屋が見える窓のほうに行きました。
二人で中をのぞきこみました。見た瞬間S山が悲鳴をあげました。

懐中電灯の光はガラス棚を照らしています。
最初何が入っているのかわかりませんでした。

「フランス人形」です。

背が180センチを越えそうなくらい巨大化し、ガラス棚から手をはみ出し、窮屈そうに。
まるで成長したかのように。

S山と僕は一目散に逃げ出しました。
必死でS山の家に帰り、ずうっと震えていました。
次の日には私はもう出発せねばならず、そのまま「あれ」がなんだったのか確認できずに終わりました。

これは実話です。