この話は友人がK先輩の退院見舞いに部屋に行った時に聞かされたものだそうです。

12~3年ほど前の話ですが、友人は関西の有名な美大に通っていました。
そこには学生寮があり友人も入寮していたので、遊びに行ったこともありますが昼間でも薄暗く気味の悪い寮でした。
実際出るという話でした。

寮で友人と先輩達で百物語をしようという話が出て結果的に後輩、同級生で20人位の人数になり始まりました。
初めの内は「怖いなー」「怖いねー」程度で済んでいたそうですが、進むにつれ嫌な空気になっていったそうです。

そのまま話は進んでいき、気付くと50話を超えていたそうです。
するとメンバーの中の一人が段々怯え始め、90話を超えた辺りには泣き出して嫌がりだし・・・。
他のメンバーも「窓の外に影が見えた」などの現象を言い出したのもあって、残り2話あったのですが、中止にして解散したそうです。

それから数日して、参加していたK先輩が変な夢を見るようになったそうです。
その夢の内容というのがまっ暗闇の中、辺り一面に蝋燭だらけでそのど真ん中に1人佇んでいるのだそうです。

そしてその一面の蝋燭から一本の小道が現れおかっぱ頭で着物姿の白塗り顔の少女がこちらに向かって歩いてきて、自分の目の前で立ち止まる。
そんな内容の夢を毎日見ていたそうですある日のこと、K先輩が事故に遭い大怪我をしてしまいました。
幸いにも命には別状は無かったのですが2~3ヶ月の入院をすることになったそうです。
そしてその後はいつもの夢も見ることもなくなり、無事に退院したのですが。
寮に戻ってくると百物語をしたメンバーのMさんが足にギプスを着けた姿で出迎えてくれたのです。

驚いたK先輩が話を聞くと、同じように事故に遭い足の骨を折ってしまったとのこと。
さらに色々話を聞いていくと、MさんもK先輩が見ていた夢と全く同じ夢を毎日のように見ていたと言うのです。

あの時百物語をした他のメンバーは、何も無かったようなのですがさすがに偶然とも思えない。
つてを頼って何なのか見てもらってお祓いして貰おうと言うことになり、その日は別れました。

そしてその夜、K先輩は事故以来見ていなかったあの夢を久しぶりに見たそうです。
ただ今までとは違っていて、いつも1メートル位手前で止まっていた少女がそのまま進んできて目と鼻の先、おかしな表現ですがキスする位の所まで来てやっと止まりました。
そして一言「よかったね」

次の朝、K先輩は早速夕べの夢を、Mさんに話しに行ったのですが。
何とMさんもまた、全く同じ夢を見て同じことを言われたというのです。
恐ろしくなった2人は、見て貰う筈の霊能力者の方の所に連絡してもらい、すぐに伺ったそうです。

その霊能力者の方に今までの経緯を話してみると言われたのが「夢に出てきた少女はあなた方2人の守護霊です。2人の守護霊が強かったので怪我で済んだのですよ。それから、よかったねと言われたのは、話さなくてよかったねという意味ですよ」

2人はどういう意味か解らずに聞き返すと「貴方達そのまま百物語を続けて、残り2話を話していたら確実に取り殺されてますよ」

「その場に悪霊が来ていて、残り2話を話そうとしている人に目を付けていたんです。貴方たち2人が残り2話の話し手だったのでしょう?」

その方の言われる通り残り2話の話し手はK先輩とMさんでした。