どこに書いたらいいのか分かんないんだけど、ここに書かせてください。
誰に言っても曖昧な答えしかしてくれないので、ここなら誰かが俺に答えをくれるかも。

小学4年生くらいのことなんだけど、親戚が水泳教室を開いていて、そこの夏季合宿みたいなのに参加させてもらった。

海辺の民宿に泊まって、海で泳いだり魚を釣ったり山登ったりする。
小学生が十数人と、あとは引率の先生が男女あわせて4人くらいいた。

俺は同年代のいとこがいたせいで、すぐに他の生徒ともうちとけ、1週間毎日楽しく過ごした。

その最終日前日のことだったと思う。
運悪く台風が近づいてきているということで、海でも泳げず俺たちは部屋でくさっていた。
みんなは部屋で喋ったりお菓子食べたりテレビ見たりしてたが、俺は目の前の海を、民宿の2階の窓からぼんやりと眺めてた。

強風で物凄い高さの波がバッコンバッコンやって来るグレーの海。

なんだあれ?

思わず声が出たのかもしれない。
気がつくと後ろにKちゃんもやってきて一緒に窓の外を見ていた。

2つ上の6年生で、虫取りが上手な奴だったと記憶している。

「え、あれ・・・」

Kちゃんも浜辺のそれに気がついたらしく、目が大きく見開いている。

荒れ狂う海のすぐそばを、白いモノが歩いてくる。
歩いてくる?というか移動してくる。
男か女かも分からない。

俺は近眼なんで良く見えない。
服とか着てるようには見えないんだけど、全身真っ白だ。

真っ白のウェットスーツ?そんなものあるのか?
動きはまるでドジョウ掬いをしているような感じで、両手を頭の上で高速で動かしている。

俺の真後ろで突然やかんが沸騰した。

ピーーー!

いや、ちがう。
Kちゃんの叫び声だった。
引率の先生が飛んできた。

Kちゃんは何回もやかんが沸騰したような音を出して畳をザリザリとはだしの足で擦って、窓から離れようとしていた。

その後引率の先生と他の先生とがKちゃんを病院に連れて行ったような気がする。
その日はみんな怖くなって布団をくっつけあって寝た。

Kちゃんは戻ってこなかった。

数年後親戚の集まりでいとこと会ったので、その夏のことを聞いてみた。
いとこはなぜか露骨に嫌な顔をした。

Kちゃんはストレス性のなんとかで(脳がどうとか言ってたかな)その後すぐに水泳教室をやめたらしい。
水泳教室自体も、夏季合宿の類を中止したそうだ。

Kちゃんは何を見たと言っていた?俺が聞きたいのはこれだけなんだが、どうしても聞きだせなかった。

俺は、その夏季合宿の後すぐ眼鏡をかけるようになった。
でも今でも、その夏季合宿の時に眼鏡をかけていたら・・と思う。

Kちゃんは一緒に森を探索したときに、木に擬態しているような虫も真っ先に見つけるほど目が良かった。
Kちゃんはきっと、その浜辺で踊っていたモノ(踊っていたとしか言い様がない)を、はっきりと見てしまったに違いないんだ。