私はそうでもないのですが、母親は霊感の強い体質のようです。
しかし、あの時の母親が帰宅してからとても尋常ではなかった記憶が強く残っております。
私が小学校高学年の頃(30年前)近所で葬式がありました。
近所ということで母親はお通夜から手伝いに行っておりました。

その葬儀とは母親が仲良くしていた知り合いの家の、6才の男の子が交通事故で病院へ搬送中亡くなってのことでした。
とてもお祖母ちゃん子でよく家へ幼児の頃から一緒に遊びに来ていました。

そのお通夜の日、事故を起こした20歳くらいの相手が訪れ焼香を終えました。
その時、その家のお祖母さんが突然子供の口調で、それも声までもその子のような感じで話し出したとのことでした。

「どうしてあの時(事故直後)お水をくれなかったの?」

「僕は水が欲しくて水が欲しくて仕方が無かったんだよ」

「どうして水を飲ましてくれなかったの。お兄ちゃんにお水が飲みたいって言ったじゃない」

「何度もお水、お水って言ったじゃない」

その場には10人以上の人間が居たのですが、皆凍りついたようにそのお祖母さんを見ているだけだったらしいです。

私の母親はその子とも仲が良かったので、思い切って話しかけたそうです。

「Aちゃん、このお兄ちゃんもビックリしてて、水をあげたかったかったけど出来なかったんだよ。許してあげて」

その後、事故の件も含めて何とか家の母親の話を聞いて納得して許してもらえることとなったそうです。
但し、条件があって。
事故現場にその子と同じ背丈のお地蔵さんを四十九日までに祀って欲しいと、その相手に言ったようです。

その事故を起こした相手は凍りつき顔面蒼白で、私の母親が「お地蔵さんの件は大丈夫ですか?」と、改めて聞いて涙を流しながらやっと「はい」とか細い声で答えられたとのことだったらしいです。
そして水を欲しがっていたのは分かっていたのだけれど、パニック状態で水をあげられなかったことを涙ながら謝ったらしいです。

その後、帰宅した母親が興奮して私に話して聞かされたことは今でも忘れません。
ちなみにそのお祖母さんはその時のことは記憶にないとのことです。
勿論、一人で事故に遭っているのでその時に水を欲しがったことなど知る由もありません。

後日、その場に居た近所の人とその話をしているのを聞いたことがありますから、作り話ではないと思います。
ただ私はその場に居た訳ではありませんので、その時の状況を肌で感じることが出来ませんでしたので、あまり他人には話したことがありません。
正直、そういうこともあるのかなぁというのが本音のところです。