この季節になると毎年思い出す洒落にならなかった話。

小学生だった頃、仲の良い三人で自転車に乗り少し離れた区民プールに行くのが日課になっていた。
そこに向かう道のりは某花火で有名な川沿いの道で、上は高速が走りその下は金網が張られて中に入れないようになっている場所もあり、そこ近辺にはブルーシートの方々が数多く暮らしている。

その金網のなかは絶好の雨風しのげるポイントだったんだと思う。
学校でも不用意に近づかないことと良く注意されていた。
しかし通り道だし、普通にジョギングなんかをしてる人などもいるし、いつもその道を通っていました。歩道のみの、まっすぐ川沿いを走れる近道だったし。

それでプールで遊んだ帰り道、軽快に自転車で走っているとその金網ゾーンの大分手前で友達が

「あれなにやってんだ?」みたいなことを言って前を凝視している。
つられてもう一人と先をよく見ていると、遠目にも汚さそうに見える人が歩道側から何か黒い物を掴んで、金網の向こう側へ放り投げている。

なんか少し重そうなカバンを両手で投げている感じだった。
金網の中に入る為に荷物を投げているんだと思ったんだけど、子供心に異様な感じがしてみんなと顔を見合わせたんだ。

なんだか通りたくなかったんだけど、まっすぐな道だから抜け道はないし、少し躊躇したけど、みんなで自転車のスピードを落として近づいて行ったんだ。
なんか見てはいけない様な気がして反対側に顔をそむけて通過しようとしたんだけど、やっぱり横目で見てしまった。

その汚いおじさんがこっちを思いっきり見ていました。
なぜかニヤニヤしていて気持ち悪さを感じました。
するとこっちを向けとばかりにおじさんはいきなり大きな声で叫んだんです。

「またぁ!!やっちまったあぁぁぁぁ!!!」

「うわっ!」

ホントにびっくりして、友達の自転車にぶつかって止まってしまいました。

汚いおじさんはニヤニヤこっちを見ています。

「!!!???」

頭が軽くパニックでしたが、金網の向こうに放り投げていた物が目に入ってきたんです。
金網の向こうにあったのはカバンではなくて、黒い猫でした・・・。

「うわぁああああ!!!」

それを見た瞬間出せる限りの力を出し自転車をこぎました。

大分離れた所で止まり「今の見た!?見た!?」と、お互い確認しあい警察に言った方がいいか等話したのですが結局そのまま帰りました。

それからはしばらくその道は通りませんでした。
またやっちまったっていうのは、趣味でやってるのか、食べる為にやってるのかしばらく悩んだものでした。