今年、国試受験なんで家で勉強してたんだが、夜2時くらいかな?部屋の壁から音がした。

「ぽん、ぽん、ぽん・・・」

誰か、壁を手のひらで優しく叩くような感じ。
何だと思って壁のほう確認したんだが、誰もいない。
しかもおれの部屋って4階の隅に位置してるから誰か壁の向こうから叩いてるってわけでもない。
実際確認したらいなかったし。

しばらくしたらまた「ぽん、ぽん、ぽん・・・」って音がする。
なんか勉強に集中できないし、だんだんうざくなってきた。

しばらくしたらまた音がしてきたんで、その瞬間壁に向かって「ドンッ」って思い切り叩いてやった。
今考えたら隣人さんごめんなさい。
苦情こなくて良かった。
そしたらピタッと音やんで、3時くらいまで勉強して、寝た。

次の日、また2時くらいだったと思うけど、また音してきた。

「ぽん、ぽん、ぽん・・・」

コノヤロウ!って思ってまた壁蹴ろうかと思って近づいたら、ピタッと止んだ。

時間も遅かったので、そのまま風呂に入ったんだ。
シャワーしてるとき、いきなり後ろからドンッって蹴られた。
ちょうど足の裏で背中にベタッと押す感じで。

それからというもの、なんか知らないけど歩いてて後ろから誰かが押してくるっていうことが多くなった。
このまえなんか電車を待ってたら後ろからドンッって押されて、危うく落ちそうになった。

先月、二度それでマジ死ぬかと思った。
一度目は電車を待ってるとき、電車がホームに進入してくるところで後ろから押された。

「落ちる!」って思った瞬間、「ガシッ」って誰かが手首つかんで、すごい力でホームのほうに引き戻された。
そのまま尻餅ついちゃったんだけど、なんでか助けてくれたのは人間じゃないなって思った。
だって、手首つかまれた瞬間すごく熱かったし、目の中に真っ赤なイメージが浮かんだから・・・。
後ろ見たらそれらしい人はいなかった。

二度目はバス停で待ってるとき。
また後ろから思いっきり押された。
ちょうど重い肩掛けバッグ持ってて、バランス大きく崩して反対車線まで行って倒れた。
車が来て、轢かれるって思った瞬間、またすごい力で引き戻された。

間一髪。
ちょうど友人もいっしょにいて見てた。

「お前の動き、体操選手より不自然だったぞ」って言われた。
そりゃあ当たり前だ。
おれの力じゃないもん。

一緒にいた友人がそういうことにくわしくて、心配されてそれまでのいきさつを話すことになった。

「おまえの後ろに誰かいるな」

「やっぱり?」

「うん、おっきい」

「どんなの?」

「んー。なんか真っ赤な男」

聞くと、別に害はないそうだ。
守護霊ってわけじゃないけど、その類。
たぶんいろいろ助けてくれたのはそいつじゃないかってこと。

「じゃあ、後ろから押してきたのは?」

「知らない」

じゃあ、誰だよ。

友人と帰る途中、友人は道の影にいる男の子に気づいたそうだ。

「おい、たぶんお前を押したの、あいつだ」

真っ青で、大きな目でじっとこちらを見てたらしい。

「見るなよ、目ぇ合わせたら終わりだ」

いやでも、おれには見えないんですけど・・・。

おれらが通り過ぎた瞬間、宙に浮いて付いてきたらしい。
ちょうど頭の上あたりで。
信号待ちしてたら、案の定、そろそろと子供が近づいてきたらしい。
その瞬間ドンッて押された。
その次に手首つかまれてグイッて引き戻された。

「・・・またかよ!」

友人はその瞬間を見てた。

「どんなだった?」

「んー。青い子供がおまえの背中を思いっきり押してった。その次に真っ赤な男が手首をつかんでお前を引き戻した。でもなんか違うんだよな」

「何が」

「青い子供が押すまで、真っ赤な男は腕組んでジッと見てるだけなんだ。・・・たぶんお前、もて遊ばれてるぞ」

なんだよ、てことは、そいつらはグルだったってことか。

「いや、そういんじゃなくて赤い方はたぶんおまえの守護霊。青い子の力が強すぎて、手が出せないっぽい。だからギリギリじゃないと助けられないみたい」

明日、知り合いの住職に相談してみてくれるとのことで、友人と別れた。

ふと考えたんだが、背中を向けてるから押されるんじゃないか?
幼稚な考えだったんだけど、信号待ちのとき、道路を背にして待っててみた。
はたから見たら変だよな。

まあ、そしたら押されることはなくなったんだけど。
バス停で待ってたとき、隣の女の人がいきなり道路に飛び出して、車に轢かれた。

轢かれた瞬間を見てしまった。
誰かにドンッて押されるように、倒れるように飛び出して、走ってきたトラックに・・・。

あとで友人に聞いたらやっぱり部屋の音の主は、あの子供だったみたい。
人間の霊とかじゃないんだけど、無差別に害をなすモノらしい。

それよりも、轢かれた女の人が心配です。
正直おれもその瞬間見てトラウマが。

今度、友人とお払い行ってきます。