昔あったことを簡単に話してみる。
始めに言っておくが俺は正気だし、脳の病気を抱えてたりはしない。

ちょうど今頃の時期。
何か連絡しなきゃいけないことがあって、出先から電話をかけようとしたら携帯が見つからなかった。
仕方ないから電話ボックス探して十円玉を入れて電話。
電話が終わって電話ボックスから出ようとしたら、人が出入り口の前に立っていた。

電話待ちかと思って「あ、すいません」って小さく言って、電話ボックスから出てさっさと行こうとしたら、腕を掴まれた。

「え?」って感じで振り返ると、俺は179.9cmだが俺の胸くらいの身長の人がいた。
黒いパーカーを着てて、小柄というかげっそりと痩せてる感じの人。
顔は俯いててよくわからない。
時間はもう夜中だし、辺りは暗い。
危ない人かと思ってちょっと怖くなった。

「なんですか?」って言っても、その人はただ俯いてるだけで何も言わない。
フードの下、なんとか見える顔の下半分。
気味が悪くなった俺は、手を払ってその場から逃げだした。
それで、ここからが本番。

それからしばらくしてから、仕事が休みの日に久しぶりに友達と飯を食いに行った。
その友達が霊感強い人。
とりあえず行きつけの食堂でラーメンとカツ丼セットを食べて、店を出てから「さぁどこに行く?」って話をしながら車に戻ろうとしたら、駐車場で別の友達とばったり会った。
※以後、霊感強い友達をA、ばったり会った友達をBとする。

「おお、ひさしぶり」って感じで、Aを放ってBとの話に花を咲かせた。
しばらく話して、AをBに、BをAに紹介しようとAの方を見た。
するとAが、Bを睨んでいる。

放置してたのでキレたか?と、悪かったとは思うが睨むことはないだろう・・・。
ムッとした俺はそのことを言おうとしたが、Aに出鼻を挫かれた。

「誰だよコイツ」

「今から紹介しようとしてんじゃねぇか!」

そう思って「こいつは」と言おうとしたが・・・言葉が出ない。

その時「あれ??」と思った。
次に「誰だっけ」って考えた。

そして、鳥肌が立った。
誰だこいつ。

怖くなった俺は反射的にBを振り返った。
さっきまで笑顔で話していたBは、俯いていた。

愕然とした。

「行くぞ」

Aが俺の腕を引く。
はっとした俺は運転席に急いで入って、食堂の駐車場を出た。

「お前、アレはよくねーよ。変なもんに気に入られたな」

「なんとかしてくれよ」とAに言うと、「無理。取り憑かれてるわけじゃないし」

取り憑かれてればなんとか出来るのか?と聞くと、「なんとかするために取り憑かれてみるか?」と返された。

それ以降、Bは見ていないが、街で俯いていてたりフードを被っている奴を見るとぞっとするし、腹立たしくもあり、複雑な心境・・・。