俺は普段の移動手段はバイクだ。
時間や場所の自由がきくから。

その日も俺はバイクで走っていた。
天気もよかったし、フルフェイスのシールドは全開にして初夏の風を満喫していた。

前方には、どこかへ出かけるであろう家族が乗ったRV車が走っている。
俺もどこか行こうかな・・・なんて考えていたんだ。
すると、前を走っていた車の窓から、何かが反対車線に飛んでいった。

「げ、ごみか!?」

俺は左端へ寄った。

ばん!

反対車線からそんな音とともに、何かが飛んできた。

「げ、ごみ・・・」

みしゃっ・・・。

視界がゼロになった。

俺はこけそうになりながらも何とか路肩にバイクを停め、視界を塞いでるものを取っ払った。
やたらずっしりしたごみは、瀕死の猫だった。
RVから飛び出してしまった猫を、ちょうどすれ違った車が打ち返してしまったらしい。

俺、何年かぶりに泣いた。
顔面痛えし、猫はすぐに息を引き取っちまったし、路肩で号泣した。

後日談になるが、俺の顔にはたいした傷もなく、変なバイ菌ももらっていなかった。
猫に死なれた家族も、運悪くそれをはねてしまったドライバーも、とばっちり食った俺も救われないけど。
一番洒落になってなかったのは近所の家の人だったかもな・・・。

チャイムが鳴って出てみたら顔面血まみれで片手に猫、片手にメット持った男が涙声で「すいませ~ん」って来てるんだもんな。
救急車の前に警察呼ばれたよ。