もう十数年前になる話。

うちの兄が道に飛び出してきた犬を避けようとして交通事故に遭って、救急車で現場近くの病院に運ばれそのまま入院。
新婚さんだった当時、頑張り過ぎてただでさえ腎臓の病気したり無理して病気がちになってたのに、ここで彼は心ぽっきり折れて義理の姉の面会すら断ってた。

ある夜更け、兄が病院の洗い場で一人洗濯してたら、女の人の声で「きばらんといかんよ(頑張らなきゃいけないよ)」って囁かれたんだって。
男性専用の洗い場だったし、看護士さんもまわりにいなくて一人でいたのに、なんで・・・と恐くなって逃げるように病室に戻った兄。
その夜、その数十年前に亡くなった祖母が夢に出てきて、「◯◯ちゃん、きばってね。きばらんといかんよ」と、洗い場で聞いたあの声で慰めてくれたそう。

それから治療が終わって無事退院した後、兄の持病はどれも嘘のように良くなって、二度と寝込んだり通院することがなくなった。
後で聞いたら、その病院、祖母が生前通ってたかかりつけの病院だったらしい。
そしてさらに不思議なことに、私の旦那さんのご両親が私が旦那と結婚する1年前に、なぜか車で20分ほどかかるその病院をかかりつけに変えたと最近判った。

小さな町に一軒しかない病院の出来事なら判るんだけど、私たちの住んでる街は人口約75万の大きな政令指定都市で、病院なんて星の数ほどたくさん点在する。
なのにたった一軒の病院を軸に幾つもの縁が結ばれるなんて、それがいまだに不思議です。