私がまだ幼かったころの話。
母方の親戚が祖母の家に集まった。
私は従兄弟たちと祖母の家でかくれんぼをして遊んでいた。

祖父母の家の二階には物置部屋があり、その部屋の奥に高さ1メートル程の小さな扉があった。
その扉は頑丈な錠前がかけられていてた。

祖母にその扉のことを尋ねると、扉の奥は納戸で、ずいぶん昔に鍵を無くしていらい開かずの間になったそうだ。

「どうせ中にはガラクタしかないからわざわざ開けるものねえ」と祖母は言っていた。

昼間でも薄暗い物置部屋は隠れ場所の宝庫で、私はその扉の手前に置いてある古びたソファーの後ろへ身を隠していた。
床に這いつくばり外の様子を窺っていると、うっすらと埃の積もった床に、あるものを発見した。

それは私の付けた足跡とは別の人の足跡。

その足跡は子供の私の足の半分にも満たない大きさだった。
小さな足跡は物置部屋の外へ向っていた。
その足跡の出所をたどると、鍵のかかった例の小さな扉からだった。

「この家には座敷童子(ざしきわらし)がいる!」

そう思った私は、一目散に一階へ降り皆にそのことを伝えようとした。

ドタドタと階段を降りてきた私を皆が制した。
母の妹の赤ちゃん(私の従兄弟)が今寝付いたばかりだから静かにしなさいと。
布団のうえですやすやと眠る赤ちゃんを、皆が笑顔で眺めていた。

しかし私はその時気付いた。
赤ちゃんの足の裏が異様に黒くすす汚れているのを。