昨年の8月12日、午後6時に羽田を発つ大阪行の日航便に乗った。
520名が命を落としたあの御巣鷹山の事故からちょうど15年たった同じ時刻の同じ便である。
機内は満席で誰もあの事故のことなど忘れているようだった。

機が離陸し、私は例の事故を思いながら、ぼーっと窓から外の景色を見ていた。
と、そのとき、翼の上に大勢の人が車座になり楽しそうに話しているのである。

中年の男もいたし、子供もいた。

そんなはずがあるわけがないと正気に戻り、スチュワーデスを呼ぼうとしたが体が動かない。
金縛りである・・・。

どれくらいたってからだろう。
スチュワーデスに起こされた。

大阪に着陸した後のようだった。
もう周りには誰もいなかった。

「相当、お疲れのようですね」

この出来事をスチュワーデスに話した。

「今日でしたよね。あの事故は・・・。私も似たような経験をよくするんですけど、気にしないようにしてます」

日航機事故で思い出したが、遺体処理の作業をした人の体験。

初めて遺体処理をした日。
ホテルの部屋に戻ると、いつもはバタンと閉まるはずのドアが半開きのまま閉まらない。
何かが憑いて来てしまったんだろうか・・・。
無理に閉めるのも怖い気がして、そのままにしておいた。

ベッドに横になり、『おいおい勘弁してくれよ・・・俺に憑いてこないでくれよ』、と念じたら、ドアがバタンっと閉まった。