私の叔父の話。
場所は山陰地方に属する地味な県のさらにド田舎(私からしたらお爺ちゃんち)。

叔父が1歳だった頃、行方不明になった。
お婆ちゃんは洗濯をしてたらしくて、長く見ても目を離してから30分も経ってない。
まだ歩けないから、行動範囲なんてたかが知れてるのに、どこを探してもいない。
警察に連絡して捜索してもらったけど見つからなかった。

一応、行方不明ということになってるけど、もう皆死んでしまったと思ってたんだって。
当時は今と違って貧しい時代だから病気で死ぬ子供も多かったみたいだし、子供もたくさんいたから、今よりは子供に対するそういう感覚が違ったのかもね。

それから1年くらい経った時に、「遠くから子供の泣き声が聞こえる」って近所の人達が騒いで、色々探し回ったら、舗装してない小さな山の頂上付近に叔父いたんだって。

見つけたのは、近所の人ではじめは叔父だと分からなかったんだけど、お婆ちゃんが駆けつけたら叔父に間違いないってことになった。
でもおかしいのは、その姿が叔父が行方不明になった当時のままの1歳くらいの姿だったこと。
1歳から2歳ってものすごく成長してるはずなのに・・・。

病院で色々検査してもらったけど体に異常はなかったらしい。
DNA検査とかは当時無かったみたいだね。
その地域で少し騒ぎになっただけで、叔父はそのまま普通に育てられた。

お婆ちゃんからこの話を聞いて、はじめは疑ったけど真面目なお爺ちゃんも、それを目撃してた他の叔父叔母も嘘をついてる様子もなく「事実だよ」って。

私はすごく怖いんだけど、みんなは「天狗に・・・」とか言って普通に受け入れてた。

結局叔父は30歳になる前に、くも膜下出血で亡くなってしまって私は会ったことはない。
この話を思い出すたびに、叔父は1年間どこで何をしてたのかってことと、見つかったのは本当に叔父なのかなって恐ろしくなるよ。
叔父自身だって記憶には無かったんだろうけど。