小学生5年の頃、松本君という友達がおり、週末になると、お互いの家を行き来して遊んでいました。

「明日はまっちゃんと遊ぶ日だぁ」とわくわくしながら寝た金曜日の夜に私は夢を見ました。

学校の前の国道を、白いフェラーリに乗ってドライブするというもの。
隣には松本君が乗っていて、自分が運転している。
バス停の人たちがみんな二人に注目していたり、友達が「俺ものせてくれーっ」って追いかけてきたり、なんかわけわからないながらも、すごくうれしくて、楽しい夢でした。

次の日の土曜日。
学校が終わって自転車で松本君の家に行くと、部屋の扉に白いフェラーリのでっかいポスターが。

私「あ!おれ、これに乗ってまっちゃんとドライブする夢みたよ!!」

松本君「うそ!俺もっ!!」

松本君も興奮気味に叫びました。

しばし二人で見つめあった後、お互いの両腕に泡立つ感覚。
なんだかわけのわからない恐怖に襲われて、閉じられた空間に居ることができず、その日は、終日外で遊んだことを覚えています。

このときが、夢がシンクロした記念すべき第1回目でした。

その後、中学3年までの5年間に、20回程度、同じことがありました。
松本君と私が一緒に夢に出てくると、きまって松本君も同じ夢を見ている。
中学卒業まで松本君と同じ学校でしたが、夢を見るたび、松本君と私は二人で夢の検証を行ったものです。

中学3年になると、クラスが異なったこともあり、そう頻繁に遊んだりすることはありませんでしたが、相変わらず松本君が夢に出てきては、図書館に行ったり、買い物に行ったりと、他愛もない夢を見ては、「昨日見た?」「おう、俺も見た」など、短い会話で確認しあうといった程度の付き合いを続けていました。

同じ夢を見ることがあるというのは、同じ学年の友達の間では有名な話で、ちょっとした怪談話になると、決まってあの話してくれとリクエストをもらったものです。
しかし、内容が怖いとか、何かの事件の前触れとか、人が死ぬとかいった内容ではなく、単に同じ夢を見るというだけだったため、決まって周囲がしらけた雰囲気になったことをよく覚えています。

そんな他愛ない夢の中で1つ印象的だったのは、帰宅途中に道端で出会った超能力ばあさんの夢でした。

私と松本君が学校の帰り道を歩いていると、道端で孫を遊ばせているおばあさんに声をかけられました。

松本君が礼儀正しく受け答えしているのですが、実は松本君も知らない人らしい。
おばあさんは、孫が散らかしたおもちゃの後片付けをしてほしいと頼むのですが、私たちが渋っているとたちまち不機嫌になって、一人で片づけを始めるのです。

でも、なにかおかしい・・・。

おばあさんが、遠くのボールや三輪車を見つめると、それらが、吸い寄せられるように手元にコロコロと近づいてくるのです。
もしかしたら自分達も吸い寄せられてしまう!という恐怖にかられ、「失礼します」と頭をさげると、慌てて逃げ出すという、まっこと意味の無い夢でした。

別々の高校に進学した後も、年に一回程度、松本君が夢に出てくることがあり、「野球部が大変だ」とか「俺、明日新人戦で」とかいう会話をする夢を見ることがありましたが、日々の忙しさにまぎれて連絡することもなく過ぎていきました。

あれから20年以上の年月が経ち、夢に松本君が出てくることなどすっかり無くなりました。
仮に出てきていたとしても、目が覚めたときにはすっかり忘れているのでしょう。
それほど、松本君の存在は、私にとって過去のものとなっていました。

お互い、20年の間にいろいろな経験をして、家庭を持ち、子育てに追われ中堅のサラリーマンとして責任のある仕事を任され、部下を動かし、予算に悩み、そんなリアルな毎日に昔の不思議で楽しかった体験や思い出を懐かしむという余裕を奪われてしまっています。

それが、今朝久しぶりに見たんです。
松本君の夢。

夢の中で私は松本君と喫茶店でコーヒーを飲んでいました。
なぜか二人とも小学生のままで、そのくせ仕事が大変だの、かみさんと喧嘩しただの、子供が小学校にあがるだのという、完全なオヤジの会話。
その中で、インターネットの話になりました。

松本君は、中学校の教員をしているらしく、昨今のインターネットを触媒とした事件が学校内でも脅威であること。
長崎の事件がどんなにショックであるかということ。
松本君の奥さんが小学校の先生で、うつ病で2年程休職しているが、その間覚えたメールが何か病状に悪影響を与えないか心配であるということ。
など等、夢とは思えない、かなりリアルな会話をしました。

インターネットといえば・・・ということで、2chの話も出てきました。

彼は、2chが悪の巣窟だと主張していましたが、私がなぜか必死に「そうじゃない」みたいなことを力説していました。

「そういえばこの夢の話、オカルト板に書こうか」と提案すると、「洒落にならない話に書くといいかもね」ということになり、いま、夢の中での松本君との約束を果たすべく書き込んでいます。

松本君がこの書き込みを見ていることを願いつつ。

追伸まっちゃんへ
私の実家は昔のままです。
いまは母親が弟夫婦と住んでいますが、訪ねてくれれば今の私の連絡先を伝えるように言っておきます。