最初に見たのは入学して二ヶ月目。
教室が二階だったので階段を上っていたら何か様子がおかしいのに気付きました。
視界に映るものがぼやけているのです。

そしてふとおどり場を曲がりきると、階段の手すりに寄りかかるようにして立っている制服を着た女の子がいました。
なぜかその子だけははっきり見えたのです。

ただし、顔だけが見えませんでした・・・。

覚えているのは長い髪と細い赤いリボン、そして赤い上履き。
顔は分からないのに、まるで私を睨んでいるかのようでした。

私が恐怖に固まっていた時間は、数分経ったのか数十秒だったのかはわかりません。
ただ少し経ってから、周囲が元に戻り彼女も姿を消しました。
金縛りが解けたように、私は慌てて階段を駆け上がり教室に飛び込みました。

もちろん見たもののことを、クラスメイトに話さずにはおれず・・・ただもう夢中で話したのでした。

それから数日後、私の体験が噂になったのを聞いた他クラスの先生が部室にいた私を訪ねて来ました。
先生はその霊の元凶となった子のことを知っていたのです。

実は私がその高校に入学する3年前、試験には合格したものの入学式前に亡くなった人がいました。

入学式前だったと言うことで、無視するのも可哀想だと言うので、入るはずだった教室に席が準備されたのだそうです。
ところがそれが全ての始まりでした・・・。

その教室は一階だったのですが、異常に日当たりが悪くなり、時間が経って花が飾られなくなった彼女の机にはどこから入って来たのかいつも猫が寝ていたり、また彼女らしき姿を教室周辺で目撃されることも多くなってきたため、二度ほどお払いしたそうです。
その結果しばらくはそうしたことがなかったようなのですが、偶然私が見てしまったと・・・。

おそらく見えなくなったのではなく出没はしていたんだと思います。
波長が合う私が入学してきてしまったので目撃することになってしまったのでしょう。

二度目に彼女に合ったのは校外でのこと。
仏壇屋の前を自転車で通っていたら、ショーウィンドーに彼女に似た人が反対方向から自転車に乗って去っていく姿が映っていました。
ところが、その時実際には道を通っている人も自転車もいなかったのです。
それで終りではありません。

三度目は美術室でのことです。
教室移動で、自分のクラスからその教室へ移動したのは私が一番最初でした。
ドアを開けるなり、部屋には白い煙が立ち込めていました。

不思議に思った私の前に、彼女が腰から上だけで・・・しかも後姿で現れたのです。
最初の出会いと比べて、恐い感じはしませんでしたし、しばらくすうると彼女は消えてしまいました。

上記のことは一年から二年の間の出来事です。
それ以降彼女と思しき人物には出会っていません。