小学生の頃、学校の畑を掘ったら土の中から陶器の狐が出てきた。
真っ白のかわらけ(※素焼きの陶器)で出来た狐のお面みたいなやつで、他にもたくさん出て七福神やら打出の小槌やら縁起物のもあった。

小学生だから「これはお宝だ!」と、気に入ったものを勝手に持ち帰った。
狐はひとつしかなかったが、掘り起こした私自身が手放さなかったのと、他の子が「釣り目でこわい・・・」と言って嫌がったので、私はお狐さんを喜んで持ち帰った。
近くで見ていた先生も特に何も咎めなかった。

で、帰ってからしばらくは大事に大事に机の引き出しに入れておいたんだけど、中学に上がってからテレビで人形供養とかそんな番組を見て、私のお狐さんも神社に納めた方がいいんじゃないか?と思い始めた。
そもそも、この畑に埋まっていた物は何なのか大人に聞いてみたが、よくわからないとの答えだった。
でも、地面に埋まっていた物なら神社かどこかにお返した方が良いかもしれないということになった。

ちょうどこの時、家族で京都に旅行する予定があったんだ。
狐なら稲荷神社がいいだろう、どうせなら総本山の伏見稲荷が良いのではと、旅行にお狐さんも持って行った。
お狐さんが手元から無くなってしまうのは寂しかったけど、潮時かなとも思ったし、伏見稲荷に行くのは凄く楽しみだった。

旅行当日。
割れたりしないよう厳重に新聞紙でくるんだお狐さんをバッグに入れて、行きの新幹線で爆睡中の私。
その夢に茶髪の兄ちゃんが出てきた。
夢の中で現実と同じく京都行の新幹線に乗ってるんだけど、乗客が私とその兄ちゃんしかいなくて、二人で向い合せに座ってる。
兄ちゃんはジーパンに白いTシャツ、腕には紫色のリストバンドをしていて、茶髪で色が白かった。
茶髪の兄ちゃんは困った顔で言った。

「あのさー、神社行くのは良いけど、伏見はやめようぜ。嬢ちゃんも、急にエライ人んとこ行けって言われたら困るだろ?俺、ずっと地元に居たいのよ。のんびりしてーの。な?頼むよ」

兄ちゃんの紫色のリストバンドは、お狐さんが割れないよう、ずっと引き出しの中にしまっていた時から包んでいた物だった。

京都に着いて伏見稲荷には行ったけど、お狐さんを納めるのはやめて、神社の人に「こういう物があるのだけど、どうすればいいですか」と質問するだけにした。
神社の人は「ご近所の稲荷神社か氏神様にお納めください」と教えてくれたので、帰ってから地元の稲荷神社に持って行くことにした。

京都から帰って地元のお稲荷さんに行く前日、また夢にあの茶髪の兄ちゃんが出て来て、「世話になったなー、これ嬢ちゃんに返すな」と、紫色のリストバンドを夢の中で私に返してくれた。

翌日、お狐さんは無事に地元の稲荷神社に納められた。
あんまり怖くないけど、不思議な話かなと思って。