先日、彼女と別れてしまいました。
当然ショックですが、なんと別れたその日に新しい彼氏をつくっていたのです。
さっぱりした彼女の性格はよく知っていましたが、さすがにこれはショックが大きかったです。

もう私には興味が無いと言わんばかりの冷たい態度をとる彼女。
同じ職場で働く時間はとても苦痛でした。

まず私は笑いました。
彼女はキャバクラ嬢によく見られる髪型、いわゆる盛りヘアが好きでした。
デートのときは毎回違う盛りを見せ、自己満足に浸っていました。
私には何かの野菜のようにしか見えませんでした。
でもとても可愛かったです。

次に私は泣きました。

彼女は自分勝手なことばかり言う人でした。
私が「無神経だね」と言うと、1日連絡をくれないほど怒りました。
でもそんなところも好きでした。

そして私は決意しました。

彼女は別れるとき、私の嫌なところをすべて言ってくれました。
頭が悪い。
運転が下手。
体の相性が悪い。
細かいところで気が利かない。
もはや嫌な部分しか見えなくなっていたようでした。
でもはっきり言ってくれたところに優しさを感じました。

もうこの景色も見られないんだな。
そんなことを思いながら、通いなれた道を車で走ります。
向かった先は野菜畑。
彼女との思い出がよみがえる場所です。

暗くてよく見えない畑で、目を凝らしながらお目当ての野菜を探します。
足音でまわりにいる人に見つからないよう、静かに歩きながら。

ついに見つけた野菜の葉。
私はそれをおもいきり引き抜こうとしました。

グイグイグイ!グイ!グイグイグイグイ!!

何度引っ張ってもなかなか抜けません。
一瞬、悲しげに私を見る彼女の顔が見えた気がしました。
葉を両手で持ち、最後の力を振り絞り、やっとのことで引き抜ぬことができました。
勢いがありすぎたのか、たくさんの土が飛び出し、私の顔や服に飛び散りました。

帰りの車の中、彼女の大好きだった曲をかけました。
道を曲がる度、助手席のビニール袋に入った野菜が楽しそうに揺れていました。

その日から彼女は突然職場に現れなくなりました。
まわりでは、彼氏と駆け落ちでもしたんだろうという噂が流れ始めていました。

私は噂を聞くたびに、ゆっくりお腹をさすり、彼女との思い出に浸るのでした。