小さい頃祖父に聞いた話で不思議なのがいくつかある。
今は亡くなってるから記憶を頼りに書く。

祖父は若い頃北海道のトンネル掘りの出稼ぎに行っていた。
トンネルは半分くらい出来上がっていて中では掘る作業が進められていた。
祖父は担ぎ棒を使って土を外に運ぶ係。

ふと入口の方を見ると兵隊の時の中尉?が立っている。

兵隊「幸さん、幸さん、ちょっと一服しませんか」

そう祖父の名前を呼びながらタバコを差し出した。

九州にいるはずの中尉が当時の格好のまま立っている。
不思議だと考える暇もなく、当時の癖で「はい。分かりました」と大きく返事をして駆け出した。

その直後、メキメキと入口を支えていた柱が鳴り、上から土や石が落ちてきてトンネルが塞がってしまった。
犠牲者がたくさんでた大事故だったらしい。
それ以来トンネル掘りはやめたと言っていた。

またまた祖父の話を思い出した。

大型漁船に乗っていた時の話。
千葉から出港するサンマ漁船だったか、北洋で鮭をとる船だったか忘れてしまった。

一度出港したら三か月は海の上。
獲れた魚は母船と呼ばれる大きな船へ運び、そこから食料を定期的に補給していた。
船には料理人や刺青師が乗っていたり、麻雀や花札をしていたらしいから、ささやかな娯楽もあったようだ。

交代で休憩をとるが、個人の寝床は決まっていない。
ともあれ肉体的にも精神的にも現代の私たちには想像がつかない苦労があったと思う。

朝起きると仲間が減っている・・・。
そんなことはもはや普通になっていた。
閉鎖された環境で、精神に異常をきたし自殺する者もいた。
いざこざで人を殺す者もいた。

だけど誰も騒ぎ立てたりはしない。
証言する者もいなければ証拠もない。
沈黙を続ける海の上では人殺しが罪に問われることはない。
そんなストレスからくる幻影かもしれない。

夜明けの早朝に作業をしていると、大海原のど真ん中に巨大な島が現れた。

機械に人が巻き込まれても、UFOが出ても手を止めなかった作業員たちが手を止めた。
休憩中の者も叩き起しみんなで島に向かって手を合わせた。

極寒のさなか、青々と生い茂る草木。
見たこともない白い大きな鳥が光をこぼしながら羽ばたく。
祖父はそこに神様がいると思ったらしい。
島は船の目の前を通り過ぎ、みるみる遠ざかっていった。

ちなみに先に書いたUFOの話。
当時UFOなどという言葉もなかっただろうがUFOっぽい。
日が暮れてから大型漁船での作業中に突然海の中から丸い派手なものが出てきた。
丸い縁にそって強烈な電飾をつけた超巨大な何かが、海から少しずつ出てきたらしい。

忙しくて見てる暇が無かったらしくその後どうなったかは分からないが、絶対に他の大型船等船の電飾ではなかったと言っていた。

ちなみに、島もUFOもレーダーに反応はなかったらしい。
大事なこと書き忘れた。

当時合法だったヒロポンはやっていない。
酒は一滴たりとも飲まず、タバコは付き合いで吸う程度の祖父でした。

※ヒロポン
旧大日本製薬(現:大日本住友製薬)から市販されていたアンフェタミン系の覚醒剤。
依存性薬物規制の直接の原因になった、最も有名な覚醒剤の一つ。