母方の祖母から聞いた話。

時は戦前。
祖母は小学生だった。
ある日の真夜中、祖母と曾祖母は何か物音がするので目が覚めたんだそうだ。
なんだと思って耳をすますと、『ざっざっざっざ』、とたくさんの人間の足音が聞こえる。
足音だけでなく、なぜか太鼓やお囃子の音も聞こえたらしい・・・。
ただ不気味なほど人の声はしなかった。
当然その日はお祭りなんてない日なので、祖母も曾祖母もおかしいと思ったそうだ。

足音は段々近づいてきて、ついに祖母の家の前で止まった。

『ドンドンドンドン!』

激しい勢いで家の戸を叩く音。

「誰?」と聞いても返事はなく、ただ『ドンドンドン』と複数人が戸を叩きまくっている。

親戚か誰かが緊急の用事で来たのかとも思ったが、そうだとすると「誰?」と聞いても返事もしないのはおかしかった。
戸を叩く音があまりにも異様だったので、「今外に出てはいけない!」と直感し、息をひそめてそいつらがいなくなるのを待ったんだと。
しばらくするとそいつらは諦めたのか戸を叩くのを止めお囃子を響かせながら遠ざかっていった。

翌朝曾祖母は近所の人たちにそのことを聞いてみたが、足音や戸を叩く音、ましてやお囃子なんて聞こえなかったと言われた。

当時祖母の親族内では半年のうちに4人(若くてピンピンしてた人ばかり)が相次いで突然死しており、あの足音たちはその4人を連れて行った『お迎え』だったんではないかと、祖母は今でも主張している。
あの時音に応じて外に出ていたら、自分も連れて行かれたのではないかと。

またこの『音』と因果関係があるのかわからないが、次の日に裏の家が全焼して住人一家全員が焼け死んだそうだ。