高校1年の2学期に転校してきたK君から聞いた話。
今でも気味が悪くて忘れられずにいる。

K君が中学の頃、父親がある地方都市に転勤になり、家族全員で引っ越しすることになった。
転勤先の営業所がある都市部に社宅があったそうだが、昔から田舎暮らしにあこがれていたK君の父親はそれを断って郊外に一軒家を探して借りることにしたそうだ。

この家がかなり年季の入った広い屋敷で玄関を入ると大きな土間があり、部屋数は10位で長い渡り廊下なんかもあったりして、昔話に出てくる庄屋さんが住んでいそうな家だったらしい。

建てられてから相当年数が経っていたらしく、あちこちガタがきていたが、とりあえず日常生活には支障がなかったらしい。
ただ、障子や襖などの汚れがひどかったので、張替えることにしたそうだ。
また、奥まった場所にあるトイレの向かい側の壁紙はカビが生えてかなり汚れていたので、それも剥がして取り替えることにしたそうだ。

K君の父親が壁紙をはがしていると中から絵か模様のようなものが現れた。
なんだろう?とよく見てみるとそれは釘で打ち付けれた『ふすま』だったそうだ。

母親はさすがにこれは事件性がありそうだし、警察に立ち会ってもらった方がいいのでは?と、もっともらしい意見を言ったそうだが、父親は、大して慌てる素振りもなく、「大丈夫、大丈夫」と言いながらふすまを開けにかかった。

しかし、このふすまがなかなか開かずに苦労したらしい。
ふすまに刺さった釘が思うように抜けず、最後はK君と弟も手伝って半ば強引にこじ開けるように開けたそうだ。

ふすまを開けると、そこには3畳程の小さな部屋があり、カビ臭い匂いが充満していたそうだ。
また、部屋の奥には小さな長方形のテーブルがあり、その上に位牌らしきものが置いてあって、その隣には写真立てが伏せて置いてあったらしい。

あまりの不気味な光景にさすがの父親もしばらく固まっていたそうだが、気を取り直すと、まず最初に伏せて置いてあった写真たてを拾い上げてひっくり返して見たそうだ。

その瞬間、「うっ」と声にならないような声を上げ、しばらくその写真を凝視してらしい。
K君も怖いもの見たさで、写真を見ようとしたが、父親に「お前は見ないほうがいい」と言われて見るのを止めたそうだ。

父親は「お祓いをしてもらった方がよさそうだな」と言って近くの寺の住職を呼びに出掛けた。

その日のうちにお祓いをしてもらい、位牌?と写真はお寺に引き取ってもらって、その後もその家に住んでいたそうだが、怪奇現象とか祟りとかの類は全くなく、いたって平和に過ごしたそうだ。

封印された部屋は一体なんだったのか?
写真には何が写っていたのか?
当時の自分は当然のことながら物凄く気になってK君に何度も質問した。

封印された部屋の謎だが住職さんの話だと、恐らく部屋の作りからいって使用人が住んでいたのだろう。
そして気の毒にも亡くなったが、身寄りがなくあの家の住人が供養していたのではないか。
しかし、引っ越すことになった時に止むを得ず、あのまま置いていったのでは?と言っていたそうだが、推測に過ぎず、本当のことはわからないそうだ。
止むを得ず置いていったとしても、釘打ちまでして封印する必要はなかったと思うが・・・。

写真の謎だがこちらはある程度は解明した。
実はK君の弟が父親が住職を呼びに出掛けた隙に、こっそり写真を見ていたそうだ。
話によると、20代半ば位の女性が着物のようなものを着て写っている白黒の写真で、特に驚くような写真ではなかったらしい。
写真を見た父親がなぜ、あんなに驚いたのかはわからないと言っていた。

結局、これ以上のことはわからずじまいで、気味の悪さだけが残ったままだ。