俺がまだ小学生だったころ、母方のじっちゃんの田舎で体験した話。
口止めされていたけど、もう爺ちゃんが他界して十年くらいになるから話す。
関わりたくない人は読まない方がいい。

じっちゃんは東北地方のある町の生まれだ。
このじっちゃんは変わった人で、食べ物の好き嫌いが激しい。
特に驚いたのはご飯が好きなのにお粥は大嫌いだといういこと。

宗教も大嫌い。
父が新興宗教にハマっていたこともあって、俺も宗教は嫌いだった。
そんなじっちゃんは、宗教的な祭事ももちろん嫌いで、特に地元のあるお祭りには家族ですら参加をさせなかった。
そのお祭りは「泣き相撲」というやつだ。

皆も一度は目にしたことがあるんじゃなかろうか。
赤ちゃんを土俵に立たせて、先に泣いた方が負けというやつだ。
泣いた方が勝ちっていう所もあるみたいだけど、うちの地方では泣いた方が負け。
しかもそれを町対抗でやる。
豊作の吉凶を占うためのイベントらしいが、じっちゃんは赤ちゃんだった俺を絶対に相撲に出さないと言って聞かなかった。

そんなことは物心つく前の話だったので、俺は知らなかったが、うちの両親がよく語り草にしていたのは覚えている。
なんでも凄い剣幕で怒鳴り散らしたとか。

そんなじっちゃんだが、俺には相当優しかった。
ほんと目に入れても痛くないと思っていたんじゃないかな。
なんせ一人娘の一人息子ですから。

しかし、じっちゃんが絶対に許さないことがひとつだけあった。
それは「泣く」ことだった。
土手で転んで膝を擦りむいたとき、大声で泣いたら、あやされるどころか「泣くな!!!泣くなーーー!!!」と怒鳴られ、拳骨を喰らった。

それで俺はあまり泣かない子に育ったんだが、じっちゃんは「子供の鳴き声は悪霊の好物だから」っていうのが口癖になってたんだよね。

「泣き相撲」って不吉な行事なんですかね?