小学生の頃の話。
下校時、よく道路沿いの家と家の間の小道を通って帰っていた。
この小道を通ると近道になるというわけではなく、むしろ遠回りになるが、ある理由によりこの小道を通っていた。

その理由は後で説明するが、この小道は2メートルほどの高い塀に囲まれていて、入り口の両方の塀にお札のようなものが貼ってある。
かなり古く何が書いてあるのかもわからない。
距離はかなり長く、50メートルほど歩くと住宅街に出て、右に進むとさっきの道路沿いの道に出る。

ある日、またその小道を通って帰っていたが、住宅街に出ると道に迷ってしまった。
迷うわけがない。
左に進むか右に進むかだけだ。
右に進んで道路沿いの道へ行けばいい。
でも迷ってしまった。
どう行けば家に帰れるかわからない。

とにかく歩いていけばわかるはずと思って、歩き出したがやはりわからない。
どこをどう歩いたのか、住宅街の小道のところへ戻ってきてしまった。
あたりは暗くなり、もうどうしたらいいのかわからず大声で泣いた。

すると前の家からおばさんが出てきて「迷子?」と聞いてきてた。
黙って頷くと「この道から来たの?」とあの小道を指差して聞いてきた。
また黙って頷くと「やっぱり。とりあえずうちにおいで」と言い、おばさんの家へ入れてもらった。

ジュースとお菓子をごちそうになりながら少し話をしたが、おばさんが言うにはこういうことがちょくちょくあるらしい。
家の前で子供が泣いていて、理由を聞くと迷子で、どこからきたのか聞くと必ずあの小道からきたという。

おばさん「なんかあぶないからね、もうあの道をとおちゃダメだよ」

家に電話をしてもらい、親に迎えに来てもらって、なんとか帰ることができた。

これに関連してもう一つ。
あの小道を通る理由というのは、小道を作っている2つの家のうち、奥のほうの家にある。
その家は小道の方は塀で囲まれているが、道路沿いの方は高さ1メートルほどの鉄柵で囲まれている。
その鉄柵は先端が槍のようになっていて、しかも歩道はドブ板1枚分の幅しかなく非常に危ない。

帰りにこの家の前を通るとき、いつもドブ板につまづいて目に鉄柵が突き刺さるという妙にリアルな映像が頭にちらつく。
それが異様に怖い。
登校時は集団登校で普通に通れるのだが、一人でこの家の前を通る下校時はなぜか怖くて仕方がないので、横の小道を通っていた。

しかし、前述した迷子事件があってからは小道を通るわけには行かなくなり、気をつけてその家の前を通って帰っていた。

迷子事件からしばらくして、下校時にいつものように鉄柵の家の前を、気をつけて通っていたら、少しして若い女性二人とすれ違い、また少し進むと後ろから女性の悲鳴が聞こえた。
驚いて振り向くと、さっきすれ違った女性のうちの一人がつまづいたのか、鉄柵に顔が突き刺さっている。

数十メートル離れているからよくわからないがピクリとも動かない。
もう一人の女性はただただ叫ぶばかりだ。
異様に怖くなり、その場から逃げ出したので、その女性がどうなったのかはわからない。

怖いのはそんなことがあったのに20年近く経った今でもその家の鉄柵はそのままだということ。
被害者があの女性だけとは限らない。
どんな人が住んでいるのかはわからないし、あの小道との関係もわからないが恐ろしい家だ。