うちは代々女系の家庭で、男子が少ないのですが、その女性たちは主に体が弱い(主に心臓)代わりに所謂霊感があります。

私も例に漏れていません。
現在ですと、私の祖母と私自身が一番強いようです。

私が小さいころから住んでいた実家は霊道だったようで、見える生活に(というか居る生活に)違和感がありませんでした。
実家が建て直しのために、新しい家が出来たのですが、家族で「もう見えることも少なくなるね」なんて話していたのです。

そんな中、私は一人暮らしのため物件を探し始めました。
色々いい物件がある中、迷っていると不動産側が「まだ広告には出してないんですけど、いい物件があるんですけど」といって一枚の間取り図を見せてくれました。
とてもいい物件だったので気に入った私はさっそく物件を見に行くことになりました。

造りは正直古いのですが、綺麗にされていて四階建ての二階の部屋でした。
中にはまだ先住民の残していた物がちらほらありましたが、初めて家を借りる私は「掃除は後から業者に頼んでいるんだろう」くらいにしか思わず、その好物件を借りることに決めました。

鍵の受け渡しも決まり、無事に引っ越しが完了したものの揃えなくてはいけない物もあって、とりあえずカーテンと照明だなぁなんて思って何の気なしに押入れを開けたんです。
すると、そこには私が確認しに来たときに掛かっていた先住民のカーテンがありました。

「何であんねやろ?片付け忘れか?」

そう思いつつ家を出て階段をちょっと降りたときに気づきました。

三階に上がる階段の隙間に、先住民の置いていった物がダンボールに蓋もせずに入れて置いてあるんです。
その時は「掃除手抜きやなぁ・・・」くらいにしか思わず、その日は終わりました。

それから、そこで暮らすようになって一ヶ月も経たない頃でした。
部屋に居るとインターホンが鳴りました。

部屋と廊下はそんなに距離もなく玄関はすぐそこ。
私はちょうど部屋の入り口にいました。
取り合えずスコープを覗きましたが人の姿は見当たりません。
正味な話、私がスコープを覗くのに10秒も掛かっていません。

身を隠そうにもこの距離だと隣の部屋に入るか、階段を上がるか降りるかです。
しかしこれだけの距離だったらどの音も聞こえますし、ましてやこの短時間です。
しかもドアは鉄製、隣に入ればドアの音が聞こえるはずですが、それがありませんでした。
とりあえず自分の中で、人ではない、と確信は出来ました。

しばらくその現象は起きたのですが、次第に少なくなりほぼ無くなったので気にも留めませんでした。

そんな生活にも慣れ、ある日遊びに来た彼氏さんと上の階についての話になりました。
書き忘れていましたが、この建物に住んでいるのは現在私のみです。
不動産の方は後々他の方も入るとは言っていましたので、彼氏さんと上の階の探索に行こうということになりました。

まず三階から。
勿論どこの扉も閉まっていましたが、試しに引っ張ってみると
施錠はされておらず普通に開くのです。
中は埃こそ溜まっているもののきちんと掃除された和室でした。

問題は四階でした。
三階は全三室、何の気配もせずでした。
四階の一部屋目も三階の部屋同様でした。
しかし、もう片方の部屋は人の住んでるような雰囲気の部屋でした。

奥に布団が引いてあるのがチラッと見えたのですが、同時に怖くなりました。
勝手に入って怒られるとかではなく、「入ってはいけないところに来てしまった」という感覚です。

彼氏さんに、「誰か住んでたみたいだね、よそう?」と言って退散しました。

数日後、大屋さんではないおじさんの鼻歌が聞こえスコープから覗くと、知らないおじさんがビニール片手に階段を上がっていきました。
それを彼氏さんと見て「何や人住んでたんや」と言って終わりました。

それから、一年くらい経ったある日、彼氏さんが一階の集合ポストを漁ってました。

「何やってんねや」と言うと、あからさまに訝しげな顔で郵便物を見ていました。

そのポストはおじさんが住んでるであろう部屋のものです。
しかし、ポストの中から出てきたのは五年も前の請求書や地域新聞、新しいものは一切ありませんでした・・・。

五年ほど前からあの部屋には誰も住まず手付かず、またはおじさんが古い物だけ置いていっているかになりますが、どちらもおかしな話なわけで・・・。

じゃ、そもそもあのおじさんは・・・?

彼氏さんに「もう一回四階に行ってみるか?」とも言われましたが、あの時の感覚もあり、とてもじゃないけど行く気になれませんでした。
その後私が体調を崩したりと言うこともあって、実家に帰省しています。

もうあの家には住んでいませんが、典型的ないわく付きの物件だったのかもしれません。