よくある話だが。
もう十数年前、山を歩くのが好きだったので仲間と近くの山をよく歩いた。
そんなある時、偶然にも、木にぶら下がった人生の果てる姿を見つけた。
蛆がこぼれ、見たこともないような大きな昆虫が体内から湧き出ていた。
数人の仲間を残して近くの交番まで届けに行った。
往復で30分ほどその場を離れただけだった。
時刻は夕方に近づいてはいたけど、まだ暗いとまではいかない夕暮れ程度だった。
警察官と一緒に現場に戻ると、仲間の女の子が泣き男子までもが震えていた。
俺は何度か見ていたので怖いとは思わなかったが彼等には恐怖だった。
もう十数年前、山を歩くのが好きだったので仲間と近くの山をよく歩いた。
そんなある時、偶然にも、木にぶら下がった人生の果てる姿を見つけた。
蛆がこぼれ、見たこともないような大きな昆虫が体内から湧き出ていた。
数人の仲間を残して近くの交番まで届けに行った。
往復で30分ほどその場を離れただけだった。
時刻は夕方に近づいてはいたけど、まだ暗いとまではいかない夕暮れ程度だった。
警察官と一緒に現場に戻ると、仲間の女の子が泣き男子までもが震えていた。
俺は何度か見ていたので怖いとは思わなかったが彼等には恐怖だった。
発見当時のことを数人の警察官に分かれて聞かれた我々は、暗くなる前にと警察官の誘導で麓の駅まで送ってもらった。
明るい駅に着いてやれやれと思っていると、一緒に警官を呼びに行った仲間が「あいつらおかしくない?」と聞いてくる。
ふと見ると、残した男女三人がまだ何かに怯えるように小刻みに震えている。
その様子から、今はまだ何も聞ける状態じゃないと感じて、そのまま家まで帰ることになった。
後日、その日のことを仲間の男子に聞くことができた。
あの日、俺達が警官を呼びに行った後、本当に少し離れた場所で彼等はその木を遠巻きに見ていたらしい。
女の子を挟むように座って遺骸に背を向けて座っていると、どこからか足音が聞こえたのだという。
「カサ、カサ、カサ、カサ」
こちらに向かって歩いてくる。
それがどこから歩いてくるのか全員がすぐに解った。
一人の男子が意を決して振り返ると、現場はそのままだった。
でも、何か変だった。
気のせいだろうと安心して座っていると「カサ、カサ、カサ、カサ」と、また足音がするのだという。
また振り返ると、また何事とも無い。
でも何かおかしい。
何がおかしいのかよく解らなかったのだが、はっきりとは見ないようにしていた。
その木の方に恐る恐る目をやると、その理由が解った。
近付いている。
さっきの違和感はこれだった。
最初に座った位置よりかなり近づいている。
確実にその木の方向に向かって。
それを黙っていようと思い、他の仲間に声をかけようとした時、「近付いてるよね?」と女の子が気づいたようだ。
「気のせいだよ」
そうは言ったものの、やはり近づいているのは確かだと思えたので、「やっぱり立って待ってよう」と言って立ち上がると、女の子が卒倒して倒れた。
確かに少し離れた位置に居たはずなのに、立ち上がった場所のすぐ後ろの木にそれがぶら下がっていたのだ。
気を失いそうになるのをこらえて女の子を抱きその場から少し離れて女の子を起こしたところに俺達が戻ったのだという。
女の子はその後しばらくは入院するほど衰弱し、どうにか回復して学校に戻った。
長い間、寂しい山の中でたった一人で居たのだ。
人が自分を見てるのが解り、無視するように背を向けているのだから、自分から近づくか、呼び寄せるのか。
ただ恐怖心からそういう幻覚に襲われたのか。
それは定かではないが、そういうこともたまに起こるのが山という場所なのかも知れない。
明るい駅に着いてやれやれと思っていると、一緒に警官を呼びに行った仲間が「あいつらおかしくない?」と聞いてくる。
ふと見ると、残した男女三人がまだ何かに怯えるように小刻みに震えている。
その様子から、今はまだ何も聞ける状態じゃないと感じて、そのまま家まで帰ることになった。
後日、その日のことを仲間の男子に聞くことができた。
あの日、俺達が警官を呼びに行った後、本当に少し離れた場所で彼等はその木を遠巻きに見ていたらしい。
女の子を挟むように座って遺骸に背を向けて座っていると、どこからか足音が聞こえたのだという。
「カサ、カサ、カサ、カサ」
こちらに向かって歩いてくる。
それがどこから歩いてくるのか全員がすぐに解った。
一人の男子が意を決して振り返ると、現場はそのままだった。
でも、何か変だった。
気のせいだろうと安心して座っていると「カサ、カサ、カサ、カサ」と、また足音がするのだという。
また振り返ると、また何事とも無い。
でも何かおかしい。
何がおかしいのかよく解らなかったのだが、はっきりとは見ないようにしていた。
その木の方に恐る恐る目をやると、その理由が解った。
近付いている。
さっきの違和感はこれだった。
最初に座った位置よりかなり近づいている。
確実にその木の方向に向かって。
それを黙っていようと思い、他の仲間に声をかけようとした時、「近付いてるよね?」と女の子が気づいたようだ。
「気のせいだよ」
そうは言ったものの、やはり近づいているのは確かだと思えたので、「やっぱり立って待ってよう」と言って立ち上がると、女の子が卒倒して倒れた。
確かに少し離れた位置に居たはずなのに、立ち上がった場所のすぐ後ろの木にそれがぶら下がっていたのだ。
気を失いそうになるのをこらえて女の子を抱きその場から少し離れて女の子を起こしたところに俺達が戻ったのだという。
女の子はその後しばらくは入院するほど衰弱し、どうにか回復して学校に戻った。
長い間、寂しい山の中でたった一人で居たのだ。
人が自分を見てるのが解り、無視するように背を向けているのだから、自分から近づくか、呼び寄せるのか。
ただ恐怖心からそういう幻覚に襲われたのか。
それは定かではないが、そういうこともたまに起こるのが山という場所なのかも知れない。
コメント