当時俺は風俗にハマっていて、金さえあればソープだデリヘルだと遊び呆けていた。

その日もデリを呼んで、ラブホでドキドキしながら嬢が来るのを待っていた。
ドキドキを長く味わう為、ホテルに入って、電話をしてから2時間ほど待つのが当時の俺のデフォだった。

すると、電話からまだ1時間ほどで「コンコン」とノックをする音が聞こえた。
時間を間違えたのかな?と思いつつもドアを開けると、心の中でガッツポーズが出るほどキレイな嬢が立っていた。

嬢は少しオドオドした様子で、「こんにちは」(俺は昼間に呼ぶ主義だった)、と言い、俯きがちに部屋に入ってきた。
そして、いきなり抱きついてきた!

あれ、お金は?時間は?と思いながらも、まぁ、こんなのもアリかと思い、そのままシャワーも浴びずにベッドへ。

嬢は既に興奮していて、顔は紅潮し息遣いも荒くなっていた。
そして俺のシャツをもどかしそうに脱がし、パンツもずり下ろすと俺のモノにむしゃぶりついた。

嬢のテクはとんでもなかった。
まさにアッという間にイかされた。
それなりに素人も含めて人数は経験していた俺だったが、全く次元が違った。
イった後も嬢は咥えるのを止めず、そのまま舌先で転がしたり、吸い付いたりして、俺のモノが早く復活するのを急かしているようだった。

嬢の希望通りに俺のモノが元気を取り戻すと、嬢は自分の服を乱暴に脱ぎ捨て、全裸になった。
俺的にどストライクの、細身で小ぶりな乳房と、形の良い尻が露わになり、俺の上に跨ってきた。
そして、程よく湿り、熱を帯びた嬢のアソコがそのまま、俺のモノを咥え込んだ。

こちらも具合は最高だった。
アソコ全体がまるで別の生き物みたいに蠢いて、俺のモノを容赦なく締め付けてきた。
当然、またもアッという間にイってしまった。

2回連続で早くイってしまったせいか、気づくと嬢が蔑んだような目で俺を見つめている。
少し腹立たしく思った俺は、強引に嬢を押し倒すと、攻めに転じた。
乳首に吸い付き、アソコを指で弄る。
嬢は身体をびくんびくんと捩らせながら、悦びの声を上げている。

俺のモノが、またしても硬くなった。
今度はこちらが上から突き立てた。
嬢が一際、大きな声をあげ俺の背中に爪を立てる。
そこで、俺は大きな違和感を感じた。

これだけ嬢と密着しているのに、嬢の息を感じないのだ。
声はもちろん聞こえているが、声に伴って肌に感じるはずの息を、全く感じない。

ハッとして嬢を見つめると、嬢がそれまでの悦楽の表情から一変し、ニターッと笑った。
嬢の口から舌が伸び始めた。
人間のそれとは思えないほど長く、首のあたりまで達した。
目は両目がそれぞれ外側を向き、それからぐるぐると異様な方向に黒目が回っていた。

情けない叫び声をあげて、俺は嬢のアソコから自分のモノを引き抜いた。
自分のモノは真っ白に染まっていて、ウネウネと動いていた。
何百という蛆が付いていたのだ。
さらに叫ぶ俺の前に、嬢が立ちはだかった。
先ほどとは違い、埴輪のような表情をしている。

よく見ると、眼窩が空洞のように真っ黒になっていて、口の中には一本の歯もなかった。
そのまま、嬢は「ホホホホホホホホホ」と笑い声ともうめき声ともつかない声を上げ始め、腰を抜かして後ずさる俺に近づいてきた。

あたりには腐臭が立ちこめ、肉片を床に落としたような、「ベシャ、ベシャ」という音が響いた。
現実離れした状況で、俺はもう恐怖の限界を超え、身動きすらとれずに嬢を見つめるしかなかった。

そのとき、ドアをノックする音が聞こえた。
途端、嬢の姿はフッと消え、腐臭も音も、蛆の大群も全て姿を消した。
ハッと我に返り、慌ててドアを開けた。
パッとしない容姿の嬢が、「遅れてすいませーん」と言いながら入ってきた。
俺はそのパッとしない嬢に抱きつき、泣いた。

パッとしない嬢も、俺の只事でない様子に狼狽し、何かあったのか聞いてきた。
俺は先ほどまでの出来事を全て話した。
すると、嬢はどこかに電話をし始めた。
ひとしきり電話の相手に状況を話すと、嬢は俺に電話を差し出し、相手と話せという。

「社長」と嬢が呼ぶその相手に、俺は再度、嬢とさして変わらない説明をした。

社長は俺の話を聞き終わると、「たまにあるんだよね」と言った。

「もうプレイする気ないでしょ、お金はいいから、ホテル代だけは払ってね」と淡々と話し、最後に「場所は関係ないから。また出たら、死ぬよ」と言った。
その後、電話は切られてしまった。

その後、風俗には行かなくなった。
社長の言葉を信じるなら、あの嬢はどこにでも現れる。
そして出会ってしまったら、俺の命はないだろう。

その出来事があってから二、三度、自宅のドアをノックする音が聞こえたが、布団を被って聞こえないフリをした。
最近はノックの音はしなくなった。
街中で、あの嬢に似た女を見かけると、視線を逸らし、できるだけ遠くを歩くようにしている。
死ぬまでこの生活は変わらないだろう、と思う。