Y「あ、お前か。久しぶりじゃん」
Yと連絡を取ったのは数ヶ月ぶりで、少し談笑したあと本題に。
私「Yさ、霊感あるっていってたよね?あれってマジ?」
Y「ん?・・・あ、やっぱりそういう話?」
なんとなく予感があったようで、Yの声が急に神妙になりました。
私「俺がパワーストーンとか集めてたの、知ってるだろ?最近なんか変な感じの奴見つけてさ」
Y「それを見てほしいって?」
私「うん・・・」
Yと連絡を取ったのは数ヶ月ぶりで、少し談笑したあと本題に。
私「Yさ、霊感あるっていってたよね?あれってマジ?」
Y「ん?・・・あ、やっぱりそういう話?」
なんとなく予感があったようで、Yの声が急に神妙になりました。
私「俺がパワーストーンとか集めてたの、知ってるだろ?最近なんか変な感じの奴見つけてさ」
Y「それを見てほしいって?」
私「うん・・・」
Yは少し黙った。
Y「いいけど・・・なあ、お前、今周りに誰かいるか?TVとか点けてる?」
私「いや、部屋に一人だけど?」
Y「あー・・・どうしようなぁ」
私「何かまずいの?」
Y「いや・・・それじゃ、明日お前の家行っていいか?」
私「え?いや、こっちから行くよ、悪いし」
Y「それはいい。俺が行くから、待っててくれ」
後日、お昼過ぎにYが家にやってきました。
Y「おう」
私「いらっしゃい。上がってよ」
この日は家族が全員出かけていて、いつになく強張った顔のYを居間へ案内しました。
Y「・・・で、石っていうのは?」
私「これなんだけど」
私が石を取り出すと、Yの顔色が変わりました。
Y「・・・」
私「Y?」
Yはじっと石を見つめて言いました。
Y「お前、こんなもんどうやって手に入れた?・・・誰かから貰ったのか?」
私「いや、ネットのオークションで買ったんだけど」
Y「あぁ・・・」
Yは納得したように頷き、大きく息を吐きました。
普段楽天家で陽気な性格のYが、見たことが無いほど神妙な顔をしているのを見て私は何だか怖くなりました。
私「何かやばそうなの?」
Y「・・・俺もよく分からんけど、何かの御神体みたいなもんじゃないかな」
私「ごしんたい?」
Y「日本のじゃない、どこか外国の・・・まあ、ちゃんとした場所に預けた方がいいわ。あんまりいい影響は無いと思うし」
Y「お前、目ぇ大丈夫か?右目」
私「えっ」
どきりとしました。
あの奇妙な夢を見た後は、必ず右目が充血するのです。
Y「この石見てると、目が痛い。何かあるんだろうな、これも」
私「・・・」
Y「・・・なあ。この石、良かったら俺が預かろうか?」
いきなりの意外な言葉に、正直面食らいました。
Y「俺の知り合いに、こういうのちゃんと保管してくれる人がいる。その人に渡してやるよ。これ以上ここに置いていてもあれだしな・・・」
Yの申し出は、正直ありがたいものでした。
私としてもすっかり恐怖心が芽生えてしまい、この石を手放したいと思っていたのです。
私「俺は助かるけど・・・いいの?」
Y「うん、まあ乗りかかった船だよ。たぶんその子らも、その方がいいだろうしな」
私「ありがとう、助かる。・・・その子らって?」
Y「お前の周りに子供が沢山いる。何か全員、お前のこと指差してるぞ」
・・・正直、血の気が引く思いでした。
Y「じゃあ、受け渡しが終わったら連絡する」
そうしてその日、その石をYに持ち帰ってもらい、私はやっと気苦労から解放されたと思いました。
今日からは安心して眠れる。
そう思い寝床に着いたのですが、また夢を見ました。
気がつけば薄暗い森の中。
大きな木があって、半裸の子供達がいる。
ここまではいつもと同じ。
違ったのは、子供達が全員で私にしがみついていて、目の前の木に括りつけられているのがYだということ。
Yは怯えた顔で私に何か叫び、必死に身をよじって逃げようとしていました。
見ると右目が抉られていて、血が黒い泥のように流れていて。
私も必死に逃げようとするけれど、子供とは思えない凄い力で押さえつけられて、それが十人いるのだからビクともしない。
子供達「ナール」
子供達「ナーシュ」
子供達が呟くと、Yが括りつけられた木の上の方で何かが動きました。
いつもは見えなかった。
けれど、この位置からは見える。
大蛇。
青白い鱗の大蛇が木を伝ってYの方へずりずりと降りてきて。
Yの頭の上で大きく口を開けました。
Yは泣き叫んでいました。
ただ、彼の声は聞こえない。
そのまま、彼の顔がすっぽりと蛇の口に納まり、蛇が身をよじるとあっさりとYの首が千切られてしまいました。
私はそれを呆然と見ていて。
木に括りつけられたYの胴体の上で蛇がこちらへ顔を向けた。
右目が無い、蛇。
そこで目が覚めた。
時間は早朝。
息が荒く、心臓が激しく鳴っていて。
全身汗でびっしょりで顔は涙でぐしゃぐしゃ。
しばらくベッドの上で自分の体を抱きしめて泣いていました。
Yが死んだ。
蛇に喰われた。
でも夢、あれは夢だ。
ただの夢。
そう自分に言い聞かせてそれでも落ち着いてから、念のためYに連絡しようかと思いましたが、妙な不安に駆られて向こうからのその後の連絡を待とうと決めました。
Yが交通事故で死んだと知ったのは、それから四日後。
車で走行中、トンネルの入り口付近で反対車線に飛び出して対向車と衝突したそうでした。
私が事故現場に行った時にはもう事故の痕跡はほとんどありませんでしたが、微かにガラスの破片やタイヤの跡らしきものが見られました。
・・・なんでYは死んだんだろう。
その痕跡を見ながら、ぼんやり考えました。
私のせいなのでしょうか。
あんな相談を持ちかけたから、Yはあの黒い石に殺されたのでしょうか。
あの事故から十年近く経った今でも後悔の念が消えません。
あの夢がYの死と無関係だったとは到底思えないのです。
あの蛇と子供達は何なのか。
あの蛇はかなり執念深いようです。
今でもあの夢は見るし、私の右目は白内障で見えなくなってしまったし、Yの事故現場で拾ったあの黒い石の欠片もいま手元にあるのです。
・・・やっぱり、凄く綺麗。
Y「いいけど・・・なあ、お前、今周りに誰かいるか?TVとか点けてる?」
私「いや、部屋に一人だけど?」
Y「あー・・・どうしようなぁ」
私「何かまずいの?」
Y「いや・・・それじゃ、明日お前の家行っていいか?」
私「え?いや、こっちから行くよ、悪いし」
Y「それはいい。俺が行くから、待っててくれ」
後日、お昼過ぎにYが家にやってきました。
Y「おう」
私「いらっしゃい。上がってよ」
この日は家族が全員出かけていて、いつになく強張った顔のYを居間へ案内しました。
Y「・・・で、石っていうのは?」
私「これなんだけど」
私が石を取り出すと、Yの顔色が変わりました。
Y「・・・」
私「Y?」
Yはじっと石を見つめて言いました。
Y「お前、こんなもんどうやって手に入れた?・・・誰かから貰ったのか?」
私「いや、ネットのオークションで買ったんだけど」
Y「あぁ・・・」
Yは納得したように頷き、大きく息を吐きました。
普段楽天家で陽気な性格のYが、見たことが無いほど神妙な顔をしているのを見て私は何だか怖くなりました。
私「何かやばそうなの?」
Y「・・・俺もよく分からんけど、何かの御神体みたいなもんじゃないかな」
私「ごしんたい?」
Y「日本のじゃない、どこか外国の・・・まあ、ちゃんとした場所に預けた方がいいわ。あんまりいい影響は無いと思うし」
Y「お前、目ぇ大丈夫か?右目」
私「えっ」
どきりとしました。
あの奇妙な夢を見た後は、必ず右目が充血するのです。
Y「この石見てると、目が痛い。何かあるんだろうな、これも」
私「・・・」
Y「・・・なあ。この石、良かったら俺が預かろうか?」
いきなりの意外な言葉に、正直面食らいました。
Y「俺の知り合いに、こういうのちゃんと保管してくれる人がいる。その人に渡してやるよ。これ以上ここに置いていてもあれだしな・・・」
Yの申し出は、正直ありがたいものでした。
私としてもすっかり恐怖心が芽生えてしまい、この石を手放したいと思っていたのです。
私「俺は助かるけど・・・いいの?」
Y「うん、まあ乗りかかった船だよ。たぶんその子らも、その方がいいだろうしな」
私「ありがとう、助かる。・・・その子らって?」
Y「お前の周りに子供が沢山いる。何か全員、お前のこと指差してるぞ」
・・・正直、血の気が引く思いでした。
Y「じゃあ、受け渡しが終わったら連絡する」
そうしてその日、その石をYに持ち帰ってもらい、私はやっと気苦労から解放されたと思いました。
今日からは安心して眠れる。
そう思い寝床に着いたのですが、また夢を見ました。
気がつけば薄暗い森の中。
大きな木があって、半裸の子供達がいる。
ここまではいつもと同じ。
違ったのは、子供達が全員で私にしがみついていて、目の前の木に括りつけられているのがYだということ。
Yは怯えた顔で私に何か叫び、必死に身をよじって逃げようとしていました。
見ると右目が抉られていて、血が黒い泥のように流れていて。
私も必死に逃げようとするけれど、子供とは思えない凄い力で押さえつけられて、それが十人いるのだからビクともしない。
子供達「ナール」
子供達「ナーシュ」
子供達が呟くと、Yが括りつけられた木の上の方で何かが動きました。
いつもは見えなかった。
けれど、この位置からは見える。
大蛇。
青白い鱗の大蛇が木を伝ってYの方へずりずりと降りてきて。
Yの頭の上で大きく口を開けました。
Yは泣き叫んでいました。
ただ、彼の声は聞こえない。
そのまま、彼の顔がすっぽりと蛇の口に納まり、蛇が身をよじるとあっさりとYの首が千切られてしまいました。
私はそれを呆然と見ていて。
木に括りつけられたYの胴体の上で蛇がこちらへ顔を向けた。
右目が無い、蛇。
そこで目が覚めた。
時間は早朝。
息が荒く、心臓が激しく鳴っていて。
全身汗でびっしょりで顔は涙でぐしゃぐしゃ。
しばらくベッドの上で自分の体を抱きしめて泣いていました。
Yが死んだ。
蛇に喰われた。
でも夢、あれは夢だ。
ただの夢。
そう自分に言い聞かせてそれでも落ち着いてから、念のためYに連絡しようかと思いましたが、妙な不安に駆られて向こうからのその後の連絡を待とうと決めました。
Yが交通事故で死んだと知ったのは、それから四日後。
車で走行中、トンネルの入り口付近で反対車線に飛び出して対向車と衝突したそうでした。
私が事故現場に行った時にはもう事故の痕跡はほとんどありませんでしたが、微かにガラスの破片やタイヤの跡らしきものが見られました。
・・・なんでYは死んだんだろう。
その痕跡を見ながら、ぼんやり考えました。
私のせいなのでしょうか。
あんな相談を持ちかけたから、Yはあの黒い石に殺されたのでしょうか。
あの事故から十年近く経った今でも後悔の念が消えません。
あの夢がYの死と無関係だったとは到底思えないのです。
あの蛇と子供達は何なのか。
あの蛇はかなり執念深いようです。
今でもあの夢は見るし、私の右目は白内障で見えなくなってしまったし、Yの事故現場で拾ったあの黒い石の欠片もいま手元にあるのです。
・・・やっぱり、凄く綺麗。
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