俺が小学5年の時の話。
朝から具合が悪くて、学校休んで高台にある県立病院に行った。
小さな町だけど5階建ての結構立派な病院。
診察終わってただの風邪だって言われて薬もらって、さぁ帰ろうという時・・・玄関に向かって歩いてたら、廊下の向こうから一人のばぁ様がつかつか俺に向かって歩いてきた。
んで、いきなり俺の胸倉掴んで、「あんたがやったんだろ!知ってるんぞ!あんたが全部悪いんだぞ!」って、いきなり怒鳴り始めた。
老人臭が凄い凄い。
ばぁ様「オレ(その地方では女性でも『オレ』って言う)、知ってるんだからな!」
朝から具合が悪くて、学校休んで高台にある県立病院に行った。
小さな町だけど5階建ての結構立派な病院。
診察終わってただの風邪だって言われて薬もらって、さぁ帰ろうという時・・・玄関に向かって歩いてたら、廊下の向こうから一人のばぁ様がつかつか俺に向かって歩いてきた。
んで、いきなり俺の胸倉掴んで、「あんたがやったんだろ!知ってるんぞ!あんたが全部悪いんだぞ!」って、いきなり怒鳴り始めた。
老人臭が凄い凄い。
ばぁ様「オレ(その地方では女性でも『オレ』って言う)、知ってるんだからな!」
もうとにかく騒ぎ出すばぁ様。
俺はまだ10歳のガキだし、胸倉掴まれた経験なんて無かったからもうわけがわからない。
見ず知らずのばぁ様にいきなりキレられる理由が見当もつかない。
俺「え?え?え?」
俺は慌てふためくばかり。
なおもばぁ様は喚き続ける。
そのうち人も集まりだしてきた。
でもばぁ様はひたすら俺に「あんたが!あんたが!」って喚き続ける。
やがて、看護婦さんと中年の小太りのおばちゃんが向こうからは走って来て、俺からばぁ様を引き剥がして「ごめんね、うちのばあちゃん、心の病気なの。勘忍してな」
おばちゃん「もうお母さん、大丈夫だから、ね、もう大丈夫だから・・・」
おばちゃんはばぁ様を抱いてなだめようとする。
尚もばぁ様は俺の方に向かって、飛び掛からんばかりの勢いで「あんたが!あんたが!」と。
そのうちばぁ様は泣き出して、床にへたり込んだ。
それでも尚、「あんたが!あんたが!」って怒鳴ってる・・・。
ついには聞き取れないような奇声挙げ始めて泣き崩れだした。
おばちゃん「もう大丈夫よ、大丈夫だから・・・部屋行こ、ね、部屋に・・・」
ついにおばちゃんも泣いて、泣いて必死にばぁ様をなだめている。
わんわん、わんわん、赤ちゃんみたいに泣き喚くばぁ様・・・。
もう取り巻きみたいな人垣が出来てて、俺は逃げるように病院の玄関へ向かった。
玄関出るまでずっと、ばぁ様はでっかい声で泣き喚いていた。
後で聞いた話だと、その病院の土地には昭和の半ばまで結核病棟があったんだそうな。
結核病棟とは言っても実質は姥捨て山みたいなところだったそうで、ボケちゃった老人や障害児がたくさん預けられてたらしい。
そして誰も引き取りに来ない仏さんがたくさんいて、無縁仏として葬られれていた、と。
戦時中はもう焼却炉で焼いて裏の山に散骨していた、という話まである。
だからその病院は、よく“出る”ことで有名だったらしい。
変な物音やキツネ憑きがよくあり、宜保愛子が来たこともあるそうな。
また、この病院に異動させられるってのは実質的な左遷で、ノイローゼになって屋上から鳥になった医者もいたそうだ。
このばぁ様はもともと内臓の病気で入院してたそうだが、ある日突然精神がおかしくなったらしい。
穏やかな優しい人だったのに、見ず知らずの人にいきなり怒鳴りだすようになった。
何があったのかは知らんし、知りたくもない。
それからしばらくして俺は親の転勤でこの町を離れた。
あれから一度もこの町には行ったことがない。
もう15年も昔、ある東北の小さな町の話。
俺はまだ10歳のガキだし、胸倉掴まれた経験なんて無かったからもうわけがわからない。
見ず知らずのばぁ様にいきなりキレられる理由が見当もつかない。
俺「え?え?え?」
俺は慌てふためくばかり。
なおもばぁ様は喚き続ける。
そのうち人も集まりだしてきた。
でもばぁ様はひたすら俺に「あんたが!あんたが!」って喚き続ける。
やがて、看護婦さんと中年の小太りのおばちゃんが向こうからは走って来て、俺からばぁ様を引き剥がして「ごめんね、うちのばあちゃん、心の病気なの。勘忍してな」
おばちゃん「もうお母さん、大丈夫だから、ね、もう大丈夫だから・・・」
おばちゃんはばぁ様を抱いてなだめようとする。
尚もばぁ様は俺の方に向かって、飛び掛からんばかりの勢いで「あんたが!あんたが!」と。
そのうちばぁ様は泣き出して、床にへたり込んだ。
それでも尚、「あんたが!あんたが!」って怒鳴ってる・・・。
ついには聞き取れないような奇声挙げ始めて泣き崩れだした。
おばちゃん「もう大丈夫よ、大丈夫だから・・・部屋行こ、ね、部屋に・・・」
ついにおばちゃんも泣いて、泣いて必死にばぁ様をなだめている。
わんわん、わんわん、赤ちゃんみたいに泣き喚くばぁ様・・・。
もう取り巻きみたいな人垣が出来てて、俺は逃げるように病院の玄関へ向かった。
玄関出るまでずっと、ばぁ様はでっかい声で泣き喚いていた。
後で聞いた話だと、その病院の土地には昭和の半ばまで結核病棟があったんだそうな。
結核病棟とは言っても実質は姥捨て山みたいなところだったそうで、ボケちゃった老人や障害児がたくさん預けられてたらしい。
そして誰も引き取りに来ない仏さんがたくさんいて、無縁仏として葬られれていた、と。
戦時中はもう焼却炉で焼いて裏の山に散骨していた、という話まである。
だからその病院は、よく“出る”ことで有名だったらしい。
変な物音やキツネ憑きがよくあり、宜保愛子が来たこともあるそうな。
また、この病院に異動させられるってのは実質的な左遷で、ノイローゼになって屋上から鳥になった医者もいたそうだ。
このばぁ様はもともと内臓の病気で入院してたそうだが、ある日突然精神がおかしくなったらしい。
穏やかな優しい人だったのに、見ず知らずの人にいきなり怒鳴りだすようになった。
何があったのかは知らんし、知りたくもない。
それからしばらくして俺は親の転勤でこの町を離れた。
あれから一度もこの町には行ったことがない。
もう15年も昔、ある東北の小さな町の話。
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