東京に住む18歳のA美は田舎から大学進学のために上京したての学生だった。
A美は初めて暮らす都会の生活が楽しくてしょうがなかったようで、暇があると街をめぐった。

田舎にはないきらびやかな雰囲気、賑やかな人並みすべてが新鮮だった。
やがてA美は居酒屋でアルバイトをはじめた。
都内の繁華街にあるその居酒屋の近くは夜遅くになっても多くの人がいてA美が仕事を終える9時くらいでもにぎやかだった。

ある日、A美がアルバイトを終え、駅のそばを歩いていると、「幼いかすみちゃんの心臓移植の手術が成功しますように折り鶴をお願いしま~す」と通行人に呼びかけていた。

A美は大学で社会福祉学を専攻していたこともあり、ボランティアには興味があった。

声掛けをしている人に話を聞いてみると、難病を患って心臓移植をする『かすみちゃん』という子どもを勇気づけるために折り鶴を集めて送るのだという。

A美も1羽の折り鶴を折って寄付することにした。
するとボランティアの1人の女性から、よかったら住所と電話番号を教えて欲しい、と言われた。
少し不審に思ったが、そのノートにはたくさんの人の名前と住所、電話番号が書かれていたので安心してしまい連絡先をノートに記した。

数日後、折り鶴を折ったことも忘れかけていた頃、A美のケータイが鳴った、知らない電話番号だ。

「あんた、なにやってるの明日までに折り鶴10羽送りなさい!」

突然、知らない人からかかってきた意味不明な電話に最初は戸惑ったが、間違い電話かと思い気にしないことにした。

その翌日、また知らない電話番号から電話がかかってきた。

「入院中のかすみちゃんに早く元気になってもらいたいでしょ!!」

一方的に言われ、電話を着られてしまった。

折り鶴・・・。
入院中のかすみちゃん・・・。

A美の記憶がリンクした。
駅前で折り鶴のボランティアの人が電話をかけてきているに違いない・・・。
でもなんでこんな脅迫まがいの電話なんだろう?
謎が謎を呼んだ。

翌日、大学へ行った時、A美は友達にこのことを相談したが、「たちの悪いイタズラだから無視すればいい」とまともに取り合ってもらえなかった。

しかし、電話は鳴り止まない。
次の日もその次の日も。

「明日までに折り鶴20個作りなさい!」

「折り鶴、30個、なんで早く作らないの!!」

「こっちは住所も知ってんだからね、明日までに折り鶴を100個折りなさい」

どんどんエスカレートしていく、折り鶴の電話。
かかってきた電話番号を着信拒否にしても違う電話番号からかかってくる。

電話に出ないと留守番電話が残され、「なんで電話に出ないのよ!!早く折り鶴を送って来なさい!!!」と、カナキリ声のおばさんから電話がかかってくる、そして不思議なことにそのおばさんの留守番電話は削除してないのに自動的にケータイから消えてしまう。
ケータイの業者に見せてもケータイにはなんの異常もないと言われてしまうし、警察へ言っても証拠がないので話を信じてもらえず、「心配しすぎですよ、ただのいたずらですから無視していれば収まります」と取り合ってもらえなかった。

やがて、A美は精神的に病んでしまい、心配になった両親がA美の一人暮らしの部屋に行った時には、やせ細った娘の姿に驚いた。

すぐにA美は精神病院に入院することに・・・。

精神病院には摂食障害で入院しているBというおばさんがいた。
BはA美に優しく、入院中は病院のことを教えてくれたり、A美を励ましてくれた。

数ヶ月に渡った入院生活も終わりに近づき、退院の日が決まったとき、A美はBに自分がもうすぐ退院することを告げ今までのお礼を言った。

するとBがA美に一言、「これで、折り鶴を折れるようになったね!」

A美は退院せず、そのまま違う病院へ入院してしまったという。