もう5年くらい前の話です。

週末の深夜になると仲間で車で集まっては夜明けまで峠を流したり騒いだりしてた頃がありまして、その夜も峠でドリフトの真似事とかしてたんですね。
助手席には先輩乗っけてて、お互いの運転で大げさな悲鳴あげたり、馬鹿笑いしたりしてました。

そのうち仲間ともちりぢりになり、そろそろ疲れたし帰って寝よう、と俺の運転で帰路についた・・・と思ったのですが、どこかの私道に入り込んでしまったらしく、気が付くと両側とも木々が生い茂る狭い道をガタゴトと走っていたんです。

すぐバックで引き返せば済むことを、面白がって「いくとこまでいこう!」と笑いながらその道を走り続けたんです。

だんだん霧が深くなってきて、あ、こりゃ廃道だったらヤバいな、と二人とも無口になってきたところで、少し道が舗装されて広いところにたんですね。
見ると、まばらに民家とか見えてきて、小さな村だなと気づきました。

・・さすがに深夜だからか、どの家も明かりも外灯もついておらず「廃村じゃねえの?」と先輩が呟いたときです。

車をとめた道の先から、だれか走ってくる!

先輩も俺も息をのんで20メートルくらい先を見つめました。
どんどんちかづいてくる・・・。
それは男で、上半身裸で、両手を振り回して、血だらけで何かを叫んでいる・・・。

「・・・た・すけ・・た・・すけて・・たす・・けて・・・」

男の手が車のボンネットに触れるかというところで先輩が叫びました。

「出せ!!出せ!!」

その叫び声の真剣さに反射的にバックのままエンジンを吹かし、男を残し俺達は逃げて逃げました。

やっと車は見覚えのある道に出られ、俺は落ち着きを取り戻し「いやぁ・・びびったすね・・でもあのおっさん助け呼んでたみたいだけど・・先輩パニくってるからw俺も逃げちゃったけど・・・大丈夫かな?」

おまえ、あのおっさんが車に触れる瞬間、なんて言ったか聞いたか、と先輩はまだ青い顔でつぶやきました。

「あのおっさん・・こういったんだ」

たすけてやらない