親父が色々話してくれたから投下する。

本当に肝心なところが詳しく言えないけど、容易に想像つくから想像してほしい。
ただ、特定とかは本当にやめてくれ。

うちは代々、瀬戸内の片田舎で医者やってるんだけどさ、どうやら先祖は、うちからかなり離れた瀬戸内の小島で御殿医してたらしいんだよね。
でも、明治時代に入ってから今の土地に移って、診療所を開設したらしいんだよ。

俺は、大政奉還の時にお殿様ともバラバラになって、新しく始めたんだろうなって軽く考えてたんだけど、現実の重さは違ったらしい。
どうやらうちの家は、御殿医と言っても全うな医者ではなかったそうなんだ。

いわゆる、裏の仕事をやる医者って言うのかな。
継承問題なんかで相手側の奥方を堕児させたり、気狂いにさせたり、直接毒盛ったり、ね。
他にももっと直接的なエグいことを聞いたけど、さすがにちょっとここでは・・・。

まあ、でも、普通なら途中で口封じのために殺されてそうなもんだけど、世渡りがうまかったのか、反対意見を消していった結果か、代によってはお殿様に凌ぐほどの発言力があったらしいんだよね。

そんなこんなでいい暮らしをしてきたうちの祖先なんだけど、実はそんな仕事のせいかバチが当たっていたらしい。
そのバチとは、うちの家系には一代に何人も奇形が出るということ。
今でも庭にその先祖の塚があるんだけど・・・と、その話は少し置いといて、奇形の話。

その奇形の特徴は様々だったけど、みんな知恵はそこそこにあったみたいなんだよ。
でも、時代的にも堂々と育てるわけにはいかない。
最初は、産まれてから奇形がわかり次第閉じ込めたり、時には殺したりもしていたそうだ。

しかし、うちの立場を最も強めた人、もともとその人は分家だったんだけど、その人から急激にうちの家の権力は強まっていったんだ。
その人が、島の外にその奇形の親族達を隔離し始めたらしいんだ。

もちろん本家や他の分家も最初は反対したらしいけど、罪悪感もあってか、遠い所ならってのと、その人本人もそこに住むならよいということになった。
そして、その人は奇形の子が産まれるたびに島へ子供を引き取りに行き、また産まれたら引き取りに行き・・・の繰り返しだった。

ある時、その人が子供を引き取りに来た次の日、島の本家筋と分家筋の人間が全て死んでしまうという事件が起こった。

詳しいことは分からないんだけど、これは家系図にも載ってて、俺も見たんだけどさ、本当に全員の命日が同じになってたんだよ。
でも、死因のところは全員憤死ってなってた。

そんなことがあって、唯一残ったその人が島に呼び戻されて、裏の稼業を続けることになった。
その人が島に帰ってから、うちの家の権力は明治になるまで右肩上がりだったらしい。

で、最後に明治以降、島を出て今の診療所に移った理由なんだけど・・・実はそれが言えないんだ。
でも、少しだけだけど、言えるのは、診療所の地下に庭の座敷牢へ続く地下道があって、その座敷牢の前には蟲塚と簡単な石が置いてある。

そして、そこに今日からは俺がお供えものをするんだってさ。
産婦人科医を継いだ俺が、ね。