中学の時の話を一つ。

文化祭の前でした。
うちのクラスの男子が一人、突然失踪しました。
昼休みにひっそりと姿を消したようで、私は気が付かなかったのです。

翌日も、その次の日も彼は登校しませんでしたが、風邪でも引いたのだろう・・・誰もがそう思っていました。

しかし、次の日、帰りのホームルームの時間、悲痛な面持ちの先生が入ってきました。

先生「T君が事故で亡くなりました。明日の夜御通夜が営まれるので、できるだけ参列するように」

私は驚きました。
T君はただ病気で休んでいると思っていたのですから。
しかし、学校内をすぐさま噂が飛び交いました。

T君は失踪前の美術の時間、クラスの男子3人にいじめられていた。
制服のまま学校から飛び出し、隣町の小学校の屋上から飛び降りたらしい・・・。
いや、国道を走るトラックに身を投げたらしい・・・。
結局彼の死因を知る者はいません。
緘口令が敷かれ、新聞にも載りませんでした。
彼が非業の死を遂げたことだけは間違いないのですが・・・。

私達は翌日、T君の御通夜に行きました。
焼香を終えて御遺族に挨拶した時、その顔に表情が無かったのが忘れられません・・・。
私達は一本ずつ缶ジュースを頂き、帰路につきました。
すると背後で「儲けた儲けた」という笑い声がしました。

その嘲笑の主は、あの3人の男子だったのです・・・。

3人のうち、一人の父親は教育委員会に勤め、また別の一人の父親は、国立大学の教授でした。
そのため真相を闇に葬ったという噂が、しばらくは絶えませんでした。
しかしそれを証明する術はありません。
息子たちはつつがなくその後の人生を歩んでいることでしょう。

T君の失踪から一年後の話です。
彼が失踪した当時、隣のクラスでは文化祭の出し物に「金田一少年の事件簿」の自主作成映画を作っていましたが、T君の事故から一ヶ月足らず、「刺激が強すぎる」として上映は中止されました。

一年後、せっかく作ったのに上映されないままなのは可哀想だと思ったのか、私達の学年だけを集めて上映会が行われました。

「七不思議殺人事件」だったと思います。
知り合いや先生が出演していることもあって、会場は大爆笑。

それから間もなく、3人組の一人(教育委員会の息子)の母親が、交通事故で亡くなりました。
T君の祟りだ、という噂もちらほら流れましたが、あっという間に消えてしまいました。
卒業してバラバラになったクラスメイト・・・事件からまもなく8年を迎えます。