私は現在入院しているのですが、同室に若い(20才位?)の子が入ってきました。
普通に会釈をしてくれたので、その時は何も感じなかったのですが、ふとあることに気づいたのです。

その子が一切喋らないことに・・・。

両親が面会にきても喋らず、看護婦さんにも喋らず、常に筆談か会釈なのです。
私も、「すみませんが、このペットボトルを開けて下さい」というメモを貰ったことがあります。(その子は腕を骨折しているようにしか見えなかった)

障害をもっているのかな?とも思いました。
しかし口を開けないのです。

今日は面会時間が長く設定されており、親戚の方も来ていらっしゃるようでした。

そこで、彼女がどうやら自殺未遂をして入院をしたらしいことが聞こえてしまいました。

ああ、それで失語症になってしまったんだろう・・・と、自分なりに納得していました。

それで夜のことなのですが、消灯後にどうしてもトイレに行きたくなり、松葉杖をついてトイレに行きました。
そこでは、彼女が歯磨きをしていました。

私は「おやすみなさい」と言うと同時に、信じられない光景を鏡越しに見ました。

彼女の口には、歯が前歯五本くらいしかなく、その上下全てが金具で固定されていました・・・。
まるでホラー映画のワンシーンのようで、彼女が会釈をしてくれたかどうかも覚えていません。

落ち着いて考えてみると、比較的食事制限のない整形外科で、彼女だけは流動食と点滴でした。
そして飲むときは必ずストローを使っていました。
彼女は喋らないのではなく、喋れなかったのです。

どんなやり方をしたらあんなふうになってしまうのか。
考えただけでも・・・。

気になったオバサンは彼女に思い切って訊いてみました。

私「腕を折ったの?」

A「シャコツとアゴを折りました」

私「痛かったでしょう?どうしたの?」

A「雨の日に洗濯物を入れようとして、屋根から落ちたんです」

私「あらそうなの」

A「ドジですよね、もう28になるのに」

ここである異変に気づきました。

ご両親と・・・似てない・・・。
それに・・・28才にはみえない・・・。
そして私はどこかで彼女を見たことがある気がしました。

あ・・・この子・・・綾波レイに似てるんだ・・・。

近くで見ると、確かに目が赤い。
髪の毛は、染めてる?

私「今日もご両親いらっしゃるの?」

A「来ますよ。でも実は私、養子で、血は繋がってないんですよ」

私「そうなんだ・・・」

医師が回診にきたので会話はここで終わりました。