山の中で黒い『棒』を見た。
正確には『棒』ではありませんでしたが。

それは私が子供の時に、兄と二人で近所の小さな山で遊んでいた時のことでした。
頂上(と言っても200メートルあるか無いかくらい)の広場で遊んで、さあそろそろ帰ろうか、と言うとき、私達が登って来た方向の逆側に、『それ』はいました。

何というか、上手く説明出来ないのですが、ひらがなの『の』の字が、立体化されたようにそこに立っていたんです。
高さは2メートルくらい、真っ黒い色をした『の』の字。
文字の隙間からは、向こうの景色も見えていました。

なんだあれ?

私達はすぐさま近づこうとしました。
するとその黒い『の』の字は、しゃくとり虫の動きを速くしたような感じで、『の』の形が細くなったり太くなったりしながら、凄い勢いで逃げて行きました。(本当に上手く説明出来なくてすみません・・・)

唖然とする私達でしたが、そのまま帰途につきました。

その日は、兄が必死に親などにそれを説明していましたが、案の定笑われるだけ・・・。
まあ、「『の』が居たんだよ!『の』が!」と言っても、意味不明ですが・・・w

兄はこれを今でもしっかり覚えていて、会う度にその話をします。
今考えてみると、あの『の』が逃げていく動きは、ちょっと可愛かった気もしますw