俺は新聞の臨時配達員というのをしてて、時期とか所属してる店によって変わるんだが全国色々なとこに行くんだ。
大概は何事もないんだが、やっぱりたまに曰く付きとか変な話のある場所もあったりする。
でも、大体はどこかで聞いたことがあるような話がほとんどで、実際に体験しても死ぬほど怖い目に遭ったってことはない。
へーそんなこともあるんだなぁ程度で聞いてくれw

都内アパートであったこと。
特に曰くがあるわけじゃなく、ただ三階の一室で変死だったか孤独死だったかがあったというだけのアパート。
そのアパートは玄関のドアにポストが付いてるタイプで、そこへ新聞を入れて回る。

ある日、三階を配っていたら、部屋を間違えて新聞をポストへ入れちゃったんだよ。
間違えたことに気付いて戻ったんだが、間違えて新聞を入れたのが、死人が出て現在は空いている例の部屋だった。

あぁ、ここが話に聞いた部屋かぁくらいにしか思わず、ポストにささってる新聞を抜こうと引っ張ったんだが抜けない。
引っかかったのかとも思ったが、どう見ても新聞が引っかかる構造のポストじゃない。
おかしいなと思いながら、とりあえず力いっぱい新聞を引っ張ったら、狭いポストの口からズルズルっと手が出てきたんだよ。

どう見ても人間の右手で、なんて言うんだ?上腕って言うのか?指先から肘までの部分、その部分までポストから出てきてる手が思いっきり新聞を掴んでて、尚も引っ張り続けてる思わずびっくりして俺の方が新聞から手を離したら、凄い勢いで手と新聞はポストの中へ引っ込んでった。

しばらく呆然と立ち尽くしてたが、ゆっくりしてる暇もないんで、予備の新聞をバイクまで取りに行って、手が出た部屋の隣、つまり本来配達するべき部屋に新聞を入れて、配達に戻ったよ。

その後も二週間くらいその地区を配り続け、例のアパートも当然配達してたが、特に何もなく契約期間終了。

よくある類の話だが、引っ張ってる手を見たのは初めてだから印象に残ったなぁ・・・。
幽霊でも新聞なんか読むのかねぇ。