いつからか祖母が突然「お母さん!助けて!」と寝言で叫ぶようになった。

あまりに大きな悲鳴なので、二階で寝ている俺まで驚いて目が覚めるくらい。
下に降りて様子を見て寝言だとわかるたびに、俺はもうだんだん気にしなくなっていった。

そんな日々が続いて、ある日祖母が軽い脱腸の手術の為に一日入院して家に帰ってくるとなぜかノイローゼ患者みたいなってて、その後アルツハイマーで死んだ。

祖母は育児放棄された赤ん坊の俺を育てるくらいしっかりした人だが、祖父曰く臆病な気質らしい。
だから、一日の病院の中で無駄に不安になったのがよくなかったんじゃないかと言っていた。

想像力というのは恐ろしいもんなんだな。
祖母が死んでからふと、あの頃祖母がどんな夢にうなされていたんだろうと思うことがあるよ。
聞いておけばよかったな。
まぁ寝言なんだけどね。

実はこれには後日談があって、祖母が亡くなって数年経ってから、元祖母の部屋を父が自分の趣味の部屋にして、そのうちベッドも入れて完全に自室にした。
そうしたら、今度はたまに父が夜中の悲鳴を上げるようになった。
理由を聞くとやっぱり「なんでもない」と・・・。

祖母のときはさんざん文句を言っていたのに、父も理由は頑として言わず、かといって元祖母の部屋から自室を移そうともしなかった。

結局、大酒のみで肝臓を悪くしていた父はその部屋で突然死したんだけど、(一応検死してもらったけど、心筋梗塞というだけの結果だった)たまにあの悲鳴と関連はあったのかもともう時がある。

ちなみに、その家は父が亡くなったあと建て替えられたので、既に存在しない。