この前、ほんのり怖かったことがあったから記念カキコ。

俺はこの春から一人暮らしを始めた大学生でさ。
小うるさい親から解放された嬉しさも手伝って、毎日のように夜更かしをしていた。
それこそ、起きていたら朝になっていた、みたいなこともよくあった。
だから、深夜に聞こえる様々な音を、俺はよく知っていた。

23時くらいになると、隣の部屋から喘ぎ声が聞こえる。
0時を越えると、上の階の住人が帰ってきて、妙に重たい足音が響く。
1時になると、暴走族のバイクの音が聞こえ始め、2時頃になると、どっかの部屋からアニメの音が漏れてくる。
そして、3時きっかりになると、「たん、たん」というノックが響く。

週に1,2回、律儀に叩かれる俺んちのドア。
これが「ドンドン」だったら、何かあったのかと思うけれど、聞こえる音は「たん、たん」だ。
昼間だったら絶対に気がつきそうにない、伝える意思がない音。
それが深夜に一回鳴ったところで、玄関に出ていく気すら起きなかった。

だけど、この前。一週間ほど前に、俺は「たん、たん」に返事をしたんだ。
バイトで嫌な客が来て、いちゃもんをつけてきたもんだから、俺はかなりむしゃくしゃしていた。
普段は気にならないことも腹立たしくなっていて、深夜に聞こえる音が全部、煩わしかった。
いちゃつくな、くそカップル。
ドタドタ歩き回るな、デブ。
暴走族はチャリに乗れ。
オタクはヘッドホンつけてアニメを見ろ。

ムカムカしながらコンビニ弁当をかきこんで、パックの麦茶で流し込んでいた時、あの音が聞こえた。

「たん、たん」という、掌でドアを叩くような音。

そんな微かな音すらうっとうしくて、俺は大きな声で玄関に向かって叫んだ。

「うっせえんだよ、ゴミクズ!!時間を考えろ!!」と。

その瞬間、「たん、たん」は、「バンバンバンバンバン!!バンバンバンバンバン!!!」に変わった。

それだけのことなんだけど、背筋がブルッとしたので、まとめてみた。