毎年今頃になると思い出す話。

学生時代に、彼氏と二人で花火をしにいくことになった。
近所の公園は花火禁止だから、少し離れた川でやることにした。
時間は20時くらい。
川辺にひらけた空き地があるのでそこを目指し、橋の脇にある遊歩道を抜けていこうとすると、全く街灯のない遊歩道の10mくらい先に、白い服を着た人が立っていた。

風もないのに白い服がぶわーっとなびいていて、その人は川に向かって高速でお辞儀を繰り返していた。
真っ暗なのにその人が見えることに違和感を覚え、見ちゃいけないというか凄く嫌な感じがしたので、彼氏に「帰ろう!」と言って戻った。
奇妙だったのは、行きは車や自転車、ジョギング中の人などが多数行き交ってたのに、帰り道はシーンとして誰ともすれ違わなかったこと。

目的もない一人旅の途中でそんなの見かけたわ。
ナビの指示が糞過ぎて曲がらなくていい路地に入り込んでさ、どんどん道が狭くなってきて、変な道に迷い込んだと気づいた。

既に1kmほど走ってたし、リルートされたんで気にせず走ってたら、深夜1時の人家の明かりもまったく無い道で、白い服を着た人が立ってる。
怖いと思って、出来る限り道の端に車を寄せて通り過ぎようとしたけど、狭い道なんで、車に当たらないようにその人を直視してゆっくり進まざる得なくてさ。
見たら髪が肩にかかるくらい髪を伸ばしてるからたぶん女の人で、そこそこ若い感じ。

ちょうど小さな橋の袂でこちらに背を向けてる感じに立ってるので、顔ははっきり見えない。
普通、こういうところで車に鉢合わせしたら、人間の本能で車の方を振り向くはずなのに、見えてからずっと微動だにしないで、少しうつむく感じで川の下を眺めてる。
通り過ぎる時は、時速5kmくらいで当たらないようにゆっくりと動いてたんだけどさ、周りの幹は揺れてないのに、その女の人の肩口あたりから黒い何か(マフラー?)がフワフワとこちらになびいてるのが見えて恐怖の絶頂。

実際に通り過ぎるまでの時間は30秒とかからなかったのに、2、3分その人と対峙してるかのように感じたわ。

ちなみに、リルートされた道が、実際は奥の路地でUターンして元の道に戻るルートだったことにその後気づいたわけだが・・・。
さっきの場所に戻るのはあまりに怖過ぎて、明るくなるまで近くの人家がある街路灯のある場所で仮眠して待機してた。

朝起きて周りを見てみたら、実際はお寺の横で、壁を隔てて墓地の隣で一晩過ごしてたと気づいてさらに寒気がした。

場所は確か和歌山の山の中だと思う。
そういえば、真冬だったのにマフラー以外は随分薄着だったように感じた。