閉店十分前になると客の有無を一階に知らせ、一階は客の入店を各階に知らせるのですが、ある日、閉店五分前くらいに客が入店したと連絡があった。

私はその時三階の専門書の売場にいたので、まぁ関係ないかな?と思ってました。
でも閉店しても客が降りて来る気配がなく、店員全員で探すことに。

十分、二十分探しても見つからず、見間違いか、もしくは出て行ったのに気付かなかったのでは?ということになり、入口と階段の防犯カメラを観ることに。

すると女性の客が確かに入店して階段を上って行くのが映っている。
なのに閉店してからは、探し回る店員の姿以外は映っていない。

泥棒?どこかにひそんでいるのでは?そんな話をしながら捜索を再開すると四階の文学書の売場から悲鳴が。
慌てて行くと、先輩店員が腰を抜かしていました。

話を聞くと「本棚のすきまから女性がこちらを見ていた」と、泣きながら言うのです。

しかし本棚のすきまと言っても、棚は壁に密着しているので、人が隠れるスペースなんてあるはずがない。

何か幻でも見たのだろうと思って、とりあえず一階の店長に事情を説明しようとカウンターの中から電話の受話器を上げた。

その時、ふと気になってその棚の方を見ると、青白い何かがちょうど私の身長(160cm)辺りからスルスルスルっと下に降りて行くのが見えました。

何だろう?と見ていると、その青白いのと目が合いました。

青白い、というよりは青黒い女性の顔が棚から三分の二ほど出てこちらを見ていました。
あるはずの首も肩も体もないものが、地面から1mほどの高さから私の方をじっと見ていました。

その書店では昔から色々いわくがあって、私も先輩から色々聞いていましたが、実際に霊を見たのはそれが最初で最後です。