私には幼いころから仲のいい、3人の友人(A、B、Cとします。三人の差別化はのちほど)がいます。
私たち4人はよく、学校から帰ってすぐに、近くにある公園で遊んでいました。

この公園の特徴としては、車道に沿って高い柵に隔たれた少し広めの公園といった感じでした。
ですが、公園の奥・・・つまり、車道とは逆側に当たるところが、木や植物が多い茂みになっていて、その向こうは崖になっており、見下ろすと墓場全体が眺められるようになっていました。

とはいえ、崖の手前にはとても高い金網が全体にされていたので、落ちて怪我をしたといった話は聞いたことはありませんでした。

この公園で4人で遊ぶのは日課のようなもので、よく金網の前に集まって座って、墓場を見下ろしながら怖い話をしていました。
ここで怖い話をすることは、ときどき親に見つかって叱られました。

ある日、Aがインスタントカメラを持ってきて、「お墓の写真撮らへん!?なんか映るかも!」と言い、みんなですぐさま賛成しました。

そしてAが金網にくっつくような感じで写真を撮り始め、残りの私たちはすぐ後ろで見ていました。
そして数枚写真を撮ったところで、異変が起こりました。

突然Aがカメラを地面に落としたまま、固まってしまったのです。
不思議に思ったBがAの肩を叩いて声をかけました。
するとAがBの手を振り払って、錯乱し始めました。
なんだかよく聞き取れない言葉を叫びながら、手を振り回したり金網に体当たりをしたりし始めたのです。

驚いて私とBで必死にAを取り押さえました。

しばらくしてAはその場で気を失って倒れました。
Cはこの騒動の最中、驚いたのか、何か叫び声をあげて泣きながら走り去ってしまいました。

Aが暴れ始めた瞬間でなく、Aを取り押さえてる最中に、Cは突然叫び声をあげて走り去ったので、少し違和感を感じたことを覚えています。

そして、私たち2人はとても怖い思いをしたものの、A自身は記憶が飛んだだけで、何も怖い思いをしていなかったので、「あっ、カメラない!茂みのほう?取ってくるわ!」などと言って、一人で茂みにカメラを探しに行ってしましました。
まぁ何事もなくAはカメラを持って帰ってきたんですけどね。

その後は何があったか説明したところ、Aは少し驚いていたようですが、すぐに「あたしの新たな一面!?」などとふざけて笑い、私たちも少しずつ恐怖が薄れてきました。

Aが気を失った時、私とBは怖くて泣きそうだったけど、でもそのままにもできず、二人でAを運んで茂みから抜け、ベンチにAを寝かせました。
そしてどうしようもなく途方に暮れていると、わりとすぐに(ベンチに寝かせてから10分くらいかな)Aは目を覚ましました。

起きたAは、「さっきまで写真とってたのに、なんでベンチに?」といった感じで困惑していました。
どうやら、暴れた記憶はなかったようです。

その後、Cのことが気になったものの、門限も近かったので、それぞれみんな自宅に帰ることにしました。
私はみんなと約束をしたわけではなかったのですが、親に怒られるのが怖く、その日の出来事は秘密にしていました。
それはAもBも同じだったようです。
ですがその夜、Cの母親が家にやってきました。

AとBの母親も一緒です。
ちなみに、私たち4人は家が近く、距離的にはA、B、Cの家が固まっていて、私の家がそこから徒歩3分ほどのところで、私たちが幼いころから、家族ぐるみで仲が良かったのです。

話を戻します。
C母曰く、どうやらCは、家に飛び込む勢いで走って帰ってきて、それからずっと部屋にこもって泣いているので、何かあったかを尋たかったが、AもBも目をそらすだけで何も言わないから、私の家まで来たようです。
私は、写真を撮ったことを親たちに話すわけにもいかず、「Cに会いたい」といって、私の母も共に、Cの家に行きました。

Cの家の前にはAとBがいて、私を見るなり駆け寄ってきました。
そしてとりあえずCに会おうという話になり、母たちにはリビングで待っていてほしいと言って、3人でCの部屋に行きました。

Cの部屋では、ベッドに座って泣いているCと、困惑しながらCに寄り添うCの父がいました。
私たちはC父にはリビングに行ってもらい、Cのそばに集まりました。
すると私たちを見て、Cは「良かった、良かった!」と言ってまた泣き始めました。

私たちが背中をなでたり、声をかけていると、少ししてからやっと落ち着いたCと、話すことが出来ました。

以下がその話です。

B「なぁ、どうしたん、Aが暴れたのそんなに怖かったん?」

A「あれ、あたしの演技やで!びっくりしたやろ?」

C「みんな、あれ見いひんかったん?」

私「あれって?」

C「Aが暴れ始めてすぐに、金網に髪の長い女の人が飛びついてきてん!がしゃんって音もしたで!」

ここで私は悪寒が走って、一瞬何も話せなくなりました。
それはみんなも同じだったようで、しばらく沈黙が続きました。
その後Cから詳しく聞いた話が以下です。


・写真を撮っているAがカメラを落として錯乱し始めたのを見て、ものすごくびっくりした。
・Bと私が抑えに行ってくれて、どうしたらいいかわからないでいたら、金網に突然女の人が飛びついてきて、その人と目が合って、びっくりして体が固まって動けなかった。
・女の人が腕と足を動かして、金網をよじ登り始めたので、そこで我に返って悲鳴をあげて走って逃げ帰った。
・AとBと私は食べられてしまったんじゃないかと思って、怖くてずっと部屋で泣いてた。
・女の人と目があったのは覚えてるけど、どんな顔だったか思い出せない。
といったことでした。

その日は一人になることが怖くて、Cの家に泊まり、みんなでずっと一緒にいました。
ですが、始めこそ怖がっていましたが、途中からAがふざけ始めて、私とBもそれに便乗する形でふざけて、最後にはCも笑ってくれるようになり、Aのおかげでわりと楽しい夜を過ごしました。

次の日はみんなで登校し、学校で騒ぎ、特に何も怖いこともなく一日が終わり、そういう日が数日続いて、恐怖はすっかりなくなっていました。
ちなみに、お墓の写真を撮ったことは、写真を撮った翌日の夜に両親に尋問された時に全部話してしまい、ものすごく怒られました。

それから数カ月がたった時、ふと思い出したように、Aが「写真、現像しよ!」と言い始めました。
思い出すとやっぱり恐怖はあるものの、時がたってそれが薄れてきてしまったことで、好奇心のほうが勝ってしまい、現像に出すことにしました。

その写真が現像から返ってきて、現像に出すという判断をものすごく後悔しました。
その写真には、私たちが映したお墓は確かに映っていたのですが、その墓石全てに、1人、もしくは複数の顔が乗っていて、全てがこっちを見上げていたのです。

そしてお墓の真ん中には、体は真っ黒で輪郭が曖昧で、髪の長い女の人がうつむいている感じで映っていたのです。
全ての写真が同じような感じでした。

ただ、数枚撮ったうちの一枚だけ、女の人がこちらを見上げていました。
小さく映っているだけなので、顔や表情まではわからなかったのですが・・・。

私たちは怖くなって、両親に相談し、現像したことを再度怒られて、すぐに神社に連れて行ってもらい、お祓いをして写真は燃やしてもらいました。

以上です。
とても長くなってしまいました、駄文失礼しました!