夏休みに友人らと肝試しに行ってきた。
社会人3年目の男3人という、ある意味で痛々しいメンバーだったが、後にも先にも「これ以上はない」と断言できるくらいに恐ろしい場所だった。
そこは、どこにでもありそうな小さな神社。
いや、祠といったほうが正しいかもしれない。
Y県では有名な心霊スポットらしく、地元の連中でさえ迂闊に近づくことはないらしい。
「人気のない山道を進んでいくと、道の脇に小さなコンクリ製の鳥居が見えてくる」とネットのクチコミで前情報を得ていたので、その場所はあっさりと見つけることができた。
社会人3年目の男3人という、ある意味で痛々しいメンバーだったが、後にも先にも「これ以上はない」と断言できるくらいに恐ろしい場所だった。
そこは、どこにでもありそうな小さな神社。
いや、祠といったほうが正しいかもしれない。
Y県では有名な心霊スポットらしく、地元の連中でさえ迂闊に近づくことはないらしい。
「人気のない山道を進んでいくと、道の脇に小さなコンクリ製の鳥居が見えてくる」とネットのクチコミで前情報を得ていたので、その場所はあっさりと見つけることができた。
目的地に着いた時にはすでに友人のSは半泣き状態で、「俺はここで待ってる」といって入り口の鳥居をくぐろうともしなかった。
仕方なく俺とTの2人だけで階段を降りることにした。
鳥居をくぐって階段を降りていくと、赤い頭巾をかぶったお地蔵様がおもむろに佇んでおり、さらに下へと降りると、6畳程度の木製の小屋があって、その中にはダンボール箱やら祭具やらがあちこちに散らかっていた。
そのまた更に奥のほうへ降りていくと、けっこう綺麗な滝があって、そこにも2畳程度のちっぽけな小屋が建っていた。
掲示板のクチコミにもあった罪人の首を切ったという青銅の剣は、滝のすぐ近くに突き刺さっており、すっかりサビていたけどなんとなく触れるのはヤバいと思い、せめてもの記念ってことでTと二人でケータイで写真撮ったりムービーを撮ったりしていた。
その時。
突然、Tがケータイを見ながら「何だコレ?」と素っ頓狂な声を上げた。
心霊写真でも撮れたのか?と思い、思わずTの携帯電話を覗き込んだ。
そこには流れ落ちる滝の水と、サビついた青銅の剣が写っているだけ。
これのどこが変なの?とTに訊くと、「滝の水。なんでこんなにドス黒くなってんだ?」
携帯電話のムービーの画質なんぞ、たかが知れている。
が、ムービーに写っていた滝の水が、みるみるうちに墨汁みたいに真っ黒い液体に変わっていくのがはっきりと見て取れた。
なんだコレ・・・気持ち悪りい・・などとTはブツブツ言いながら映像を削除していた。
まさかな、と思いつつ、俺は自分のケータイのデータフォルダのサムネイルを表示した。
入り口の鳥居のところから写真を撮っていたのだが、信じられないことに撮った写真の全てにドス黒い煙のようなものが写っていた。
特に、今さっき滝の近くでTを撮ったばかりの写真はおぞましく、Tの顔面と両腕しか写っていなかった。
それらを除いた空間はすべて、真っ黒に塗り潰されていた。
「これはやばいだろ・・・戻ろうぜ」
あまりに異様な状況に戦慄を覚え、一刻も早く車に戻るため階段を駆け上った。
階段を上る途中、上のほうから妙な音が聞こえてきた。
ゴッ!!ゴッ!!ゴッ!!
何かが何かとぶつかり合う音。
ぎょっとしながらも不気味な音源のほうに向かうと、そこは例の小屋だった。
6畳ほどの小屋の中には、上で待っていると言ったはずのSがいた。
あろうことか、Sは直立したまま、自分の頭を小屋の壁にゴッゴッと打ち付けていた。
「S!!何やってんだよ早くこい!!!」
Sの手を引っ張って無我夢中で階段をダッシュで上り、速攻で車のエンジンを入れて速攻でその場所を離れた。
T「おいS、大丈夫か?お前何やってたの?
上で待ってるって言ったじゃん」
S「だって多いから。おまえら多いし、痛いから」
T「はあ?意味わかんねえ、意味わかんねえよ。本当に大丈夫か?」
俺は運転手だったからうろ覚えだが、後部座席で2人がこんなやりとりをしていたのは記憶している。
Sの口からは何度も「多い」「痛い」という言葉が出てきた。
Sはバリバリの体育会系で下ネタやくだらないジョークが好きな奴だけど、この時はなぜか喋る内容ばかりか口調までどこかおかしくて、TはしきりにSの体調を心配してた。
その後、国道沿いのガソスタで燃料を補給してから、コンビニで飲み物とか買おうって話になった。
コンビニの駐車場で車を降りた途端、いきなりSがゲーゲー吐き出した。
なんというか、普通の吐き方じゃなかった。
両手の指を口の中に突っ込んで、涙とか鼻水とか涎とか垂れ流しで、吐しゃ物はボタボタ落ち続けるわで。
とりあえずコンビニで天然水を買ってSに飲ませた。
Sは水を飲むとだいぶ落ち着いたようで、先程のことを話し始めた。
Sの口調はいつも通りに戻っていた。
以下、Sの話。
・コンクリ製の鳥居をくぐったTと俺の後ろに、もう一組の2人の男がいた。
・2人組みは地蔵の近くにある小屋に入って、それっきり出てこなかった。
・しばらくしてから、小屋の中から「痛い、痛い」と悲鳴のような声が聞こえてきた。
で、気がつけばSは小屋の中にいたらしい。
Tも俺も、Sがこれだけ冷静にあの時の様子を見ていたことに驚いたが、写真やムービーに写っていた黒い煙や黒い滝については全く心当たりがないそうだった。
かく言う俺らも、後ろに2人の男がいたことや「痛い、痛い」という悲鳴には全く心当たりがなかった。
結局何も分からないままだったけど、あの場所には二度と行くまいと誓った。
写真に写った黒い滝、黒い煙、Sが見たという2人の男は一体何だったのか。
謎と恐怖だけが残った。
仕方なく俺とTの2人だけで階段を降りることにした。
鳥居をくぐって階段を降りていくと、赤い頭巾をかぶったお地蔵様がおもむろに佇んでおり、さらに下へと降りると、6畳程度の木製の小屋があって、その中にはダンボール箱やら祭具やらがあちこちに散らかっていた。
そのまた更に奥のほうへ降りていくと、けっこう綺麗な滝があって、そこにも2畳程度のちっぽけな小屋が建っていた。
掲示板のクチコミにもあった罪人の首を切ったという青銅の剣は、滝のすぐ近くに突き刺さっており、すっかりサビていたけどなんとなく触れるのはヤバいと思い、せめてもの記念ってことでTと二人でケータイで写真撮ったりムービーを撮ったりしていた。
その時。
突然、Tがケータイを見ながら「何だコレ?」と素っ頓狂な声を上げた。
心霊写真でも撮れたのか?と思い、思わずTの携帯電話を覗き込んだ。
そこには流れ落ちる滝の水と、サビついた青銅の剣が写っているだけ。
これのどこが変なの?とTに訊くと、「滝の水。なんでこんなにドス黒くなってんだ?」
携帯電話のムービーの画質なんぞ、たかが知れている。
が、ムービーに写っていた滝の水が、みるみるうちに墨汁みたいに真っ黒い液体に変わっていくのがはっきりと見て取れた。
なんだコレ・・・気持ち悪りい・・などとTはブツブツ言いながら映像を削除していた。
まさかな、と思いつつ、俺は自分のケータイのデータフォルダのサムネイルを表示した。
入り口の鳥居のところから写真を撮っていたのだが、信じられないことに撮った写真の全てにドス黒い煙のようなものが写っていた。
特に、今さっき滝の近くでTを撮ったばかりの写真はおぞましく、Tの顔面と両腕しか写っていなかった。
それらを除いた空間はすべて、真っ黒に塗り潰されていた。
「これはやばいだろ・・・戻ろうぜ」
あまりに異様な状況に戦慄を覚え、一刻も早く車に戻るため階段を駆け上った。
階段を上る途中、上のほうから妙な音が聞こえてきた。
ゴッ!!ゴッ!!ゴッ!!
何かが何かとぶつかり合う音。
ぎょっとしながらも不気味な音源のほうに向かうと、そこは例の小屋だった。
6畳ほどの小屋の中には、上で待っていると言ったはずのSがいた。
あろうことか、Sは直立したまま、自分の頭を小屋の壁にゴッゴッと打ち付けていた。
「S!!何やってんだよ早くこい!!!」
Sの手を引っ張って無我夢中で階段をダッシュで上り、速攻で車のエンジンを入れて速攻でその場所を離れた。
T「おいS、大丈夫か?お前何やってたの?
上で待ってるって言ったじゃん」
S「だって多いから。おまえら多いし、痛いから」
T「はあ?意味わかんねえ、意味わかんねえよ。本当に大丈夫か?」
俺は運転手だったからうろ覚えだが、後部座席で2人がこんなやりとりをしていたのは記憶している。
Sの口からは何度も「多い」「痛い」という言葉が出てきた。
Sはバリバリの体育会系で下ネタやくだらないジョークが好きな奴だけど、この時はなぜか喋る内容ばかりか口調までどこかおかしくて、TはしきりにSの体調を心配してた。
その後、国道沿いのガソスタで燃料を補給してから、コンビニで飲み物とか買おうって話になった。
コンビニの駐車場で車を降りた途端、いきなりSがゲーゲー吐き出した。
なんというか、普通の吐き方じゃなかった。
両手の指を口の中に突っ込んで、涙とか鼻水とか涎とか垂れ流しで、吐しゃ物はボタボタ落ち続けるわで。
とりあえずコンビニで天然水を買ってSに飲ませた。
Sは水を飲むとだいぶ落ち着いたようで、先程のことを話し始めた。
Sの口調はいつも通りに戻っていた。
以下、Sの話。
・コンクリ製の鳥居をくぐったTと俺の後ろに、もう一組の2人の男がいた。
・2人組みは地蔵の近くにある小屋に入って、それっきり出てこなかった。
・しばらくしてから、小屋の中から「痛い、痛い」と悲鳴のような声が聞こえてきた。
で、気がつけばSは小屋の中にいたらしい。
Tも俺も、Sがこれだけ冷静にあの時の様子を見ていたことに驚いたが、写真やムービーに写っていた黒い煙や黒い滝については全く心当たりがないそうだった。
かく言う俺らも、後ろに2人の男がいたことや「痛い、痛い」という悲鳴には全く心当たりがなかった。
結局何も分からないままだったけど、あの場所には二度と行くまいと誓った。
写真に写った黒い滝、黒い煙、Sが見たという2人の男は一体何だったのか。
謎と恐怖だけが残った。
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