「何か」を見た話。

今からもう10年前・・・になっちゃった。
当時、まだキチンと就職していた、小さな障害者の施設で指導員をしていた。
少人数なので、一から十まで何でもやらされたんだが、日曜日返上で、一人で遠足の下見に行った時のこと。

隣県との境にある山のハイキングコース。
コンクリートで出来た、丸太を半分に切った形のベンチで休憩し、ペットボトルのお茶を飲みながら休憩していた。

「タシ!タシ!タシ!」と軽快な足音をさせ、「へっ!へっ!へっ!」と進行方向から、犬がやってくる。
1m弱の柴犬位の大きさ・・・。

この山は、捨てられたり逃げ出したりしたペットの犬が、大きな群れを作り問題になっている・・・という都市伝説みたいな「野犬」の噂があったが・・・。

そんな凶暴な野犬だったら嫌だなぁと思いつつ、身を固くしてじっとソイツを見る。

向こうも俺に気付いて止まった。

よく見ると、ソイツは凄く「変なヤツ」だった。

妙にひょろ長い・・・。

TVのペット番組か何かで見た「ボルゾイ」とか言う犬みたいに四肢が細いピコっと耳を立ててこちらを伺う。

何だコレ?ウサギ?
丸っきりウサギと言う訳じゃないが、なんとなく連想させられる。

その訳はすぐ判った。
コイツ目が横に付いている・・・。

犬なら目は両方前向きに付いているが、コイツは耳を立て、顔を横に向けてじっと俺を見る、気持ち悪い・・・。

色んな野犬同士で交配して、こんな畸形っぽいのが生まれたのだろうか?

変な病気を持っていないだろうか?
襲って来たらどうしようか?
様々な思いがグルグル回って、身動きが取れなくなってしまった。

が、ソイツはすぐに、くるりと回れ右をして元来た方に歩きだした。
思わずベンチから立ち上がった俺にびっくりしたのか、そのままダッシュで走り去ってしまった。

その後、様々なサイトを巡ってみたが、そんな犬種に出逢えることもなく、当時は「変なブサイク犬」と思っていたが・・・アレは本当に犬だったのだろうか?