喫茶店でバイトをしていた時の話。

寂れた喫茶店で時間帯問わず、いつもガラっとしてる店でした。

ある日、一組のカップルが来店し、コーヒーを一杯ずつ注文したきり延々と席に座っている。

ほんと座っているだけなのね。

話もしないし、お互いの顔を見るわけでもない。
俯き加減に二人ともじーっと座っている。
そこにもう一人客が入ってきた。

若い男性で、この人はしょっちゅう店に来る常連。

漫画家なのかイラスト関係の人なのかわからないけど、小さいスケッチブックをいつも持っていて、店内の風景だとか、コップや食べ物をスケッチするのが日課みたい。

案の定、例のカップルを良い題材だと思ったのか、サンドイッチパクつきながら盗み見して鉛筆を動かし始めた。

コーヒーのお代わりを持っていくついでに何気なく描かれたスケッチを見てビックリした。

四人用の席に向き合って座っていたカップル。

その男性の隣りにもう一人同年代くらいの女性が描かれていた。

絵の中のカップルはやはり俯き加減で暗い表情で描かれているのだが、その、いないはずの女性の絵は、すごく楽しそうにはしゃいでいるような描写の仕方で、違和感ありすぎて、不気味だった。

悪戯心でそれが描いてあったのか、それとも実際そういう風に見えていたのかはわかりません。