小さい頃の話。

探検に飽きて、部屋に帰る為にアパートの階段の下まで歩いていた時のこと。
上から男の人が落ちてきた。
もう一歩歩いていたら確実にぶつかっていた位置だった。

落ちてきた衝撃が足に伝わった。

恐る恐る目を開けると、そこには悲惨な状態の男性などおらず、ただのコンクリートが広がっているばかり。
しかし、怖かったので仕事から帰ってきていた母にすぐ報告。
熱中症を疑われ、その日は再び探検には出られなかった。

その日から後の話。
また探検に飽きて部屋に帰る為に階段下まで行くと、上から笑顔の男の人が落下してきた。
落ちてきた衝撃を足に感じて、また恐る恐る目を開けると、今度は男の人がいた。
ただ、出血はしておらず、痛そうに立ち上がった。

目が合ったので、「大丈夫?痛くない?病院行かないと、痛いの駄目。命って大事だよ。ええっとだからジャンプ駄目」と、なぜか片言で捲し立てていた。

男の人は苦笑いしながら「大丈夫だから、ごめんね」と言って、スッと消えてしまった。
たぶん、幽霊だと思われる。

良いことをしたと思った私は、母に自慢げに報告した。

その日から、『怖い話に関わるな』という家のルールが出来た。
母は怖い話を聞いた影響だと思ったそうだ。