先輩の話。

大学の部活で、山合宿をしていた時のこと。
朝起きてテントを出た先輩は、辺りを見回してギョッとした。
テントが張られた空き地の周囲に、猫がずらりと寝そべっていたのだ。
寝る前には、猫など一匹もいなかったのだという・・・。
驚く先輩たちを尻目に、猫は思い思いの格好で寝そべっていた。

そのうち、テントの中で小さな騒ぎが起きた。
前の晩に燃料を満たしておいたマナスル(携帯用ストーブ)が、綺麗に空になっていたのだ。

思わず皆が猫を見たが、彼らは知らん顔で欠伸していたという。

『化け猫は、菜種油は舐めても、灯油は舐めないよなぁ・・・』

少なくない部員がそう考えたのではないか、そう先輩は言う。

後で地の人に聞いたところによると、その山は猫に縁が深いらしい。
その辺りの年老いた猫は、死期が来るとその山の奥に姿を消すのだと。

地元では、猫山と呼ばれていたそうだ。