九州の某県での出来事。

あれはまだ自分が中学生だった頃。
家はごく普通の平屋の一軒家。

庭もついててそこそこ広くていい物件だった。
立地も中々で、住みやすい場所だった。

んで、この家で体験した出来事。
その日母親と弟は地域のソフトボールの試合か何かに行ってて自分は家で留守番してた。
居間でクーラーつけてソファーで某有名な魔法学校の小説読んでた。

本を半分位読んだ時だった。
廊下からズル・・・ズル・・・って何かを引きずる音が聞こえてきた。

ん?と思ったけど買ってる犬が玄関マットで遊んだりすることもあったからそれだと思ってまた本に視線を落とした。
でもよく考えたらおかしいんだよね。

犬の足音とか爪音とか全くしなくて。
しかも犬は自分の足元で気持ちよさそうに寝てて・・・。

じゃあ何の音なんだ?
猫でも入り込んだか?
そう思ってソファの後ろの庄司の破れ目から廊下を覗き込んだ。

ちょうどその位置から見えるのは廊下の曲がり角で風呂場の前になるんだけど、最初は何にもなかった。

でもその何かを引きずる音はだんだん近づいてくる。

何かヤバイ気がして目を話そうとするんだけど、体が動かない。
本当にやばい、って思ったとき・・・。

ベタンッって音がしてその廊下の曲がり角から血まみれで焼けたような人の手が・・・。

ぎゃー!!って頭の中はパニックなのに声も出ない。
その間にもその何かはこっちに向かってくる。
ちょうど匍匐前進の要領で。

ついに頭が見えて、目があったとたんニヤリって笑った。

女だった・・・。

顔は手と同じように血まみれで所々焼け爛れてた。

「ヴーとかあ”ー」とか言いながらどんどん近づいてくる。
ついに全身が見えて、はっきり言ってスプラッタだった。
体が原型とどめてるのが不思議なくらい。

もうホントに気持ち悪かった。

動きたくても動けない。
時間にしたら1分とかそんなもんだったのかもしれないけど自分には1時間にも2時間にも感じられた。

足元で寝てる犬はなんにも反応しないし、女がもう目の前まで来ててダメかもって漠然と思った。

女が自分に向かって血まみれで焼けた手をすごい形相で伸ばしてくる。
口の端からは血がゴポゴポ流れてるし、所々歯とか骨みたいなのが見えてた。
もう少しで自分が覗いてた障子に女の手が触れそうになった時、電話が鳴った。
そしたら体が動くようになって、女も消えてた。

電話とったら母親の友人でさ。

「あんた今危なかったやろ?」って開口一番に。

それで今しがたあったことを話すと「聞かんでもわかるよ。だってその女さ・・・今もあんたの後ろにおるけんね」と。

背筋が凍ったよ・・・。
その母の友人曰く女のうめき声が電話越しに聞こえるんだと。

それからあれよあれよと言う間に母親と弟が帰ってきて、その母の友人が電話で母親になにか説明してた。

母親ももともと感じる体質らしくて良くないものがいるなとは前々から思ってたらしい。

この女を見る前から自分も弟より少し小さいくらいの男の子を何回か見てたりとか、軍服姿で片足のない男の人とか、おじいさんとか見てたから、幽霊ってホントにいるんだってこの時点で思った。

母親も弟も感じるだけらしくて実際は見てないらしいんだけどあれは見なくて正解だと思う。

あのは女空襲で亡くなったらしいんだけど、いまだに自分が死んだことに気づいてないんだって。

それでいまだに助けを求めてさまよってるらしい。

そのあと簡易的なお祓いしようと思って線香とか母親が買いに行ったんだけど、不思議なことに帰ってきたら線香だけ綺麗にないの。
それも二回続けて。

なんとか線香とか買ってきてお焚き上げしたんだけどあの女だけどこにも行かなかったらしくてさ。

結局その母親の友人が連れて帰ってお祓いしたんだって。

ちなみにこの家、構造的に幽霊が入ってきても出ていけないらしくて霊のたまり場になってるらしいよ。

そしてにその家は現在もある。