新聞配達のバイトしてた時、4階建てのアパートの前で、野良猫とかち合った。
人に懐いていない野良だったから、そいつは俺の顔を見るなり、全力で逃げ出しアパートの中に飛び込んだ。

俺が配達するときは、いつも最上階まで一気に昇って、降りながら1軒ずつ新聞を配っていくんだけど、そのせいで、図らずも猫を追いかけることになってしまった。

フロアごとにフェンスから外を見下ろし、飛び降りようとするんだけど高すぎて諦め、俺が近づいてくるのを見て、さらに上の階へ逃げる・・・というのを繰り返す猫。

とうとう最上階の4階に到着。
階段は、さらに上へ続いているが、その先は屋上に繋がるドアで、常に施錠されているから、どん詰まりになっている猫は、やはりフェンスから下を覗き込み、俺の顔を見て、その屋上に続く行き止まりの階段を昇り始めた。

逃げる猫の尻を追いかけて階段を見上げると、何かおかしい。

階段が妙に明るい。
日の出が近い空の、青っぽい光が入り込んでいる感じ。

ひょっとして、屋上のドアが開いてるのかと思い、俺も昇ってみると、なぜか、もうワンフロアあった。

今まで昇ってきた他のフロアと同じように、ピンク色のスチール製ドアがずらっと並んでいて、部屋番号はどれも『40X』。

ワンフロア数え間違えた?と普通なら思うところだけど、その時はなんだか信じられなくて、階段を下りて確認した。
すると部屋番号『40X』のドアが並んでいる。
そして振り返ると、階段は真っ暗になっていて、試しに昇ると屋上へ続くドアに突き当たった。

混乱しながらも、配達を終えて販売店に帰投した俺は、起こったことを販売店のおやじさんに説明した。

「そりゃあ、猫に化かされたんだろwww」と、おやじさん。

まあ、寝不足で幻覚でも見たんだろうって結論で落ち着いたんだけど、なんとも奇妙な体験だった。
でも、もし下の階を確認せずに、普通に配達してたら、どうなったんだろ?