その病院、階段の踊り場に灰皿があってさ、そこの椅子に座って2人でタバコ吸ってた。
談笑中、突然耳鳴りがして、下の階段を凝視した。
見えないけど、何か来たっていうのが分かった。
俺そこをがジーって見てると、友達が服の裾を掴んで「見るな」と。

「やっぱいる?」って聞くと、「ろくなもんじゃない。見てるとやばいよ」と。

詳細を聞くと、体が子供で顔がじいさん。
そいつが俺たちを見てニコニコしてる、と。

「うわ、そりゃビジュアルだけでも十分やべえや(笑)」って、笑いながらそこを見てると、「馬鹿、笑いながら見るな!」って、友達ちょいマジ切れで、俺の手を掴んでひょこひょこ病室に帰った。

俺が「どうしたんだよ?」って聞いたら、友達が「お前、笑いながらじいさん見てたろ。そしたらじいさん、突然凄い形相になって、こっちに向かってきたから逃げてきた」と。

そりゃやばいやってことで、お見舞いに行ってもそこの階段は使わないことにした。

友達が入院して2週間目くらいかな。
その日も夕方だったんだけど、冬だから18時になると外は真っ暗なのね。
だから大抵の人はその前に帰るんだけど、俺は暇だから夕方の面会ギリギリまで友達の病室にいた。

で、時間になったので1階に降りて、トイレに寄って、用を足してトイレから出ようとした瞬間、金縛りにあった。

立ったまま、体どころか顔すらピクリとも動かせない状態。
後ろから物凄い悪意に満ちた視線を感じて、まずいと思ったので、心の中で九字を切って、唯一覚えた魔よけの呪文を唱えた。

体は相変わらず言うこときかないが、なんとか顔だけ動かせたので、悪意の正体を見ようと、無理やり顔を捻って後ろを見た。

悪意の正体は女の子だったよ。
4~5歳くらいの。
おかっぱ頭で、ちびまる子ちゃんをリアルにして少し大きくしたような。
なんつーんだろ、笑い声が、まさしく「ケタケタケタ」って感じでこっち見てんの。
しかも目がね、空洞なんだよ。
真っ黒なの・・・心底ゾッとした。

『消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!』って心の中で叫んでると、女の子が甲高い声で、「さっきおじいちゃんを殺してきたよ」と気味悪い笑顔で言って、ぴょんぴょん跳ねた。

跳ねがどんどん大きくなって、俺と同じくらいの高さくらいまで跳ねた瞬間、一足飛びで俺の所に跳ねてきた。
俺は恐怖とショックで立ったまま失神。

どれくらいか、時間的には1分か2分くらいだろうね、気づいたらその場にへたり込んでた。
あの女の子は死神の類なんだろうか?
霊なんてまともに見たことないのに、あんな形で見ることになるとは・・・。

次の日、もちろん昼間ね。
病院に行って友達に昨夜の出来事を伝えると、「それって1階の受付から見て、左に10mくらい行ったとこのトイレか?」と。

まさしくそう。

俺「そこだよ。あそこやばくね?」

友達「ごめん、言うの忘れてた。あそこは使うな。あのトイレはピンポイントの霊道だ」

トイレの霊道はマジでやばいらしく、ただでさえ不浄な場所なのに、そこを不浄な霊が通ると、同調して霊道をはずれ、その場に留まることが多々あるらしい。
俺が見た女の子は、そのうちの一人なのかも。
まるで霊感の無い奴なら気にならないらしいが、俺みたいな中途半端な奴がそいう場所に行くと、危険な目に遭いやすい。

んで、「昨日この病院で、じいさんが亡くならなかったか?」と、気になってたことを聞くと、「分かるわけないだろ。毎日誰か死んでんだ。そんなのいちいち気にしてらんねーよ」と。

そう、大きな病院て、そういうとこなんだよね。
改めて気づかされたっていうか。

その1週間後に友達退院したから、もうあの病院には行ってないけど、ほんとに怖い体験だったよ。